「夏の風の神、パンに祈るための」
《Image》
羊の群れのかたわらの羊飼いの描写、田園の雰囲気が漂よい、清々しい風を受けながら広野へと導かれていく。
《Memo》
ピアノ連弾のための『六つの古代エピグラフ(碑銘)』より第一曲。ドビュッシーの友人でもある詩人ピエール・ルイスの古代ギリシャへの幻想などをうたった詩集「ビリティスの歌」に基づく作品で、1914年に完成されました。ここには、「前奏曲集」からつながるドビュッシー独自の音画的で繊細な技法が受け継がれています。作品は6曲から成り、「ビリティスの歌」からヒントを得た標題が、各曲についています。
『夏の風の神、パンに祈るための』は、5音音階によるドリア調の旋律がフルートの響きを想わせ、それによって田園の雰囲気が描き出されています。音で描かれた生命を呼び起こし、その夢幻的な音の世界によって魅了されますが、「古代」という言葉はそれ自体が瞑想的で、現実から遠く離れた広野を歩いているような錯覚を覚えます。
《Play Notes》
4手連弾の曲ですので音の厚みがありますが、柔らかな風の動きを表現するためにも響きをよく聴いてフレーズやリズムの面白さを出したいと思います。落ち着いた曲想の中にスリルを感じるような動きがあるのも魅力的に演奏したいところですね。音で描かれたような色彩的な音楽からドビュッシー自身もオーケストラ版を作る思いがあったということが納得できます。