「喜びの島」

《Image》
船出する恋人達の愛の歓び。目指すは幻想的な雰囲気を湛えた愛の女神ヴィーナスの島、楽園。

《Memo》
『喜びの島』は1904年の作品で、ドビュッシーの作品の中で、もっとも外向的な性格を持った作品であり、ピアノ的オーケストレーションとも言えるほど、変化に富んだ音の組み合わせや、自在にかつ正確なリズムの躍動を思い切り駆使しています。 この作品は、ルーブル美術館にあるワトーの名画〈シテール島への船出〉から着想されたといわれています。ワトーの絵にある楽しさ、興奮、官能的な雰囲気に満ち溢れています。そして、それは勝利への舞踏のリズム、女神をたたえる輝かしいファンファーレへと集結していきます。 この作品を演奏するにあたっての難しさを、ドビュッシーが出版先に宛てた手紙には次のように書かれてあります。 「しかしまあ、なんと演奏の難しい曲だろう!この曲にはピアノを攻撃するための、あらゆる方法が集結されている。なぜって、この曲には力強さと優雅さが混ざり合っているからである。......極端な言い方をさせてもらうのなら!」 昔からドビュッシーが大好きでしたので、この曲は知っていましたが、今年の発表会で初めて弾いた曲です。実際に弾いてみると、今まで聴いていたイメージが私の中でガラリと変わりました。そのリズムの面白さ、繊細で色彩豊かな音色に魅了され、この曲を勉強していると、どんどんのめり込んでしまいます。

《Play Notes》
私が一番難しく感じたのは鋭く軽く弾くということでした。 この曲全体のリズムが非常に軽やかであり、付点音符はウキウキとする気持ち。また、流れるようなレガート奏法は波と風を感じて演奏しました。オーケストラをイメージして書かれたピアノ曲ということですので、ここはシンバル、ここはトランペットという楽器の音色をイメージして音にする難しさはありますが、たった独りで、10本の指でオーケストラできる喜びを感じます。 最後に両手で和音を連続して弾く所は、大変迫力がありますが、オーケストラのようなパンチのある音を出すには十分な脱力が必要だと感じました。