「グラナダ」
《Image》
美しい絵葉書を見ているかのような旅情に誘い込まれる

《Memo》
1886年に構想されました「スペイン組曲」は、アルベニスの作品としては初期のものですが、郷土色が豊かな優れた作品です。第1曲目の『グラナダ』(作品47-1)は、アルベニスがしばらく過ごした事のあるアンダルシアの古都グラナダの面影を偲んだセレナードです。作曲当時、アルベニスは友人宛の手紙の中で次のように書いたのだそうです。

「...花々の香り、糸杉のつくる半影、峰の万年雪の合間に漂う、狂おしいばかりにロマンティックで、絶望的なほどに哀しいセレナードを僕は書いた...」

3部形式をとり単純な作風に見えますが、同じ旋律を3度上で自然な流れのうちに繰り返す転調の絶妙さからは、アルベニスがいかに天才肌の作曲家であったかということが伺えます。

この曲の中の穏やかな美しい旋律には惹かれていましたが、狂おしいほどにロマンティックで絶望的な哀しいセレナードとまでは感じていませんでした。しかし、アルベニスが友人に書いた手紙を読んでから、私の中でこの曲に対する感じ方が変わり、演奏も変化したと思います。曲の背景を知る事の大切さと面白さを改めて感じました。

《Play Notes》
右手のアルペジオにのって、左手の2オクターブのアルペジオが、ギター奏法の美しい響きでメロディーを奏で始めます。この出だしの透明感を大切に維持しながら、印象深く弾きたいと思います。ヘ長調から変イ長調に変わり、中間部では様々に転調して美しい変化をみせます。そこに、グラナダの美しい街並みや、そこでの想い出が、懐かしい哀しみをもって、美しくそして鮮やかに描き出されるように表現できたら素敵ですね。