Little Players News

No.25 2000

いよいよ新学期のスタートですね。気持ちも新たに頑張りましょう!

「眠れない夜に気持ちが晴れやかになる音楽」

バッハの音楽は美しい調和の世界にあると思うのです。まるで天上の声のように優しく、大きな翼で包み込んでくれるようです。でも、聴くぶんには大変安らげるバッハの音楽ですが、弾くとなると話は違って、1音1音を愛しむように鳴らさなければ曲を美しく響かせる事ができません。ストレスなど溜まりやすい現代社会において「癒しの音楽」という言葉をよく聞くようになりましたが、遠い昔、大バッハが不眠症に悩む伯爵のために作曲したというお話を聞くと、今も昔も変わらないのだなと思いました。

ヨハン セバスチャン バッハの作品 W

「ゴルトベルク変奏曲」ト長調 BWV.988

「ゴルトベルク変奏曲」というのは通称であって、正しくは「色々な変奏を持ったアリア」です。

その昔、不眠症に悩むカイザーリンク伯爵が、眠れない夜のために、彼に仕えていたクラヴィーア奏者ゴルトベルク(バッハの弟子)に演奏させる曲をバッハに作曲依頼した、という有名なエピソードで知られています。演奏に1時間近くも要するこの名曲は主題のアリアと30変奏曲で構成されています

おすすめのCD

「ゴルトベルク変奏曲 / グレン・グールド」

SONY SRCR2059 1981年録音

グールドのデビューを飾った1955年録音と最後の録音となった2つのディスクがあります。バッハ最晩年の傑作を、50年の生涯の最後に録音したCDは世紀の名演と言われ続けている程です。私も聴いてみましたが、最初のアリアのテンポが驚くほど遅いのです。 続く第一変奏からは一転して情熱的に突き進んでいきます。その表現の鮮やかなこと!生涯2度にわたってこの大曲に挑戦したグールド。長年にわたって築きあげた独自のバッハの集大成だったのでしょう。1964年、ステージ演奏活動をドロップアウトしたことはあまりにも有名ですが、以来かたくなに録音の道で歩み続けたピアニストの最後の偉業となった名演奏を是非お聴き下さい。