Little Players News
No.29 2000

暑い日が続いていますが、夏バテしないように体調に気を付けてくださいね。

 

読譜の基礎とは

耳でおぼえてからピアノを弾くのは「大変危険なこと」と言うとオーバーに聞こえるかも知れませんが、私の経験から言っても、これは大切な事なので、もう一度ここでお話したいと思います。

いろいろな理由があるのですが、ここでは大きく2つの理由を取り上げてみましょう。 1つは演奏のテクニック的な理由で、これは、例えばワープロやタイプライターが上手な人が手元を見ないで文章をタイプ出来る事と同じです。手の感覚がきちんと出来ているので、いきなり与えられた文章でもすらすらと入力出来るのですが、ピアノ演奏でも楽譜を見ながら弾けるという事は、特に譜読みの段階でとてもスムーズに練習が出来ます。覚えてから弾くタイプの人は易しい曲であれば逆に譜面を読みながら弾く人より要領よく弾けてレッスンも早く進むのですが、だんだんと曲が長く難しくなってくると、覚えるのが大変になって、なかなか思うように練習が進まず、練習が嫌いになってきます。気が付けばいつも曲の始めの部分ばかり練習していて、少しも先に進みません。ところが譜面を読みながら弾ける人は最初はぎこちなくても、とにかく最後まで譜面を追いながら弾けますし、手の感覚も次第に身について上達し、譜読が全く苦にならなくなってきます。 曲の全体の構成や素敵な箇所などもわかってきて、練習が楽しくなり、もう早くピアノに向かって練習してこの曲をうまく弾けるようになりたいという気持ちが溢れてくるのです。

そして、第2の理由です。ピアノの練習において譜読みは第一歩。この段階でマルをあげちゃう先生もいるみたいですが、本当に大切なのは、ここからですよ。 楽譜を何度も何度も読んで、音と音フレーズとフレーズ、そして曲全体の構成など、作曲者がどのように想い、どのような気持ちを音にしたのかなどに思いを巡らし、どのように曲を仕上げていけば、美しく響くのだろうかと考えながら、自分の演奏を仕上げていくのです。 その為に、できるだけ多くの事を楽譜から読みとっていかなければなりません。もちろん楽譜だけでなく、作曲者の伝記を読んだり、TVや本、あるいは実際に足を運んで、その曲が作られた土地の風景を見たりしながら、曲のイメージを作っていくのです。 

どうですか?まず曲を覚えてしまって、そのイメージだけで練習を繰り返していても、自分の曲にならないという事が、わかってきましたでしょうか? 演奏会などで、ピアニストは楽譜を見ないで演奏する事は多いですし、発表会でもそうですが、それは楽譜を覚える事が大切なのではなくて、楽譜を覚えてしまうくらい、その曲を理解して、自分のものにしてしまうという事が大切なのです。