Little Players News

No.62 2003 5月

新緑の美しい季節となりました。若草色は目にも心にもすがすがしい色ですね。今年の発表会Little players Vol.12 は、9月21日(日)を予定しています。

バヘハモベ シリーズが終わりましたので、今月は、ピアノは何故88鍵なのだろう?ということについてお話したいと思います。

ピアノの進化

現在では、ほとんどのピアノの鍵盤は88鍵ですが、ピアノの歴史上、88鍵として普及したのは20世紀に入ってからのことです。モーツァルト(1756〜1791)が弾いていたのは5オクターブ61鍵で、鍵盤が軽いのが特徴でした。現代のピアノの、半分ぐらいの重さだったようです。またハンマーの大きさもソラマメほどで、音量はさほどなかったのですが、軽快なタッチの演奏にはふさわしかったようです。モーツァルトは、61鍵のピアノでたくさんのピアノソナタやコンチェルトを書きました。ベートーヴェン(1770〜1827)の頃になると初期には61鍵だったものが、中期には68鍵となり、喜んだベートーヴェンは有名な「熱情ソナタ」で、このピアノの最高音をふんだんに使っています。後期には73鍵になり、特に低音域の鍵盤が増え、響きも豊かになってきました。ピアノが大躍進する、ショパン(1810〜1849)、リスト(1811〜1886)が活躍した19世紀には、現在のピアノの機構がほとんど完成されました。78鍵や85鍵のピアノを使って数々の名曲が生まれました。20世紀に入ると、大会場にふさわしい音量が要求されるようになったため、ひと昔前に比べて鍵盤の寸法が長くなり、沈み具合も深くなり、88鍵が標準になりました。88鍵をフルに活用した作品の例はラヴェル(1875〜1937)の「水の戯れ」。色彩感あふれる技巧をこらして、88鍵の最低音から最高音までをフルに使った作品です。

作曲家も聴く人にとっても、それ以上の音域を必要としないということから、88鍵で落ち着きましたが、ピアノの音域を88鍵以上に広げようという試みがなかったわけではありません。ウィーンの名器ベーゼンドルファーのコンサートグランド(インペリアル)という機種は、低音が普通のグランドピアノより9鍵も多く作られています。

私も実際に弾いたことがありますが、この部分を弾いても、ほとんどうなり声のようにしか聞こえません。また、88鍵に慣れている人が演奏すると違和感がある為、この部分は鍵盤が黒く塗られています。