Little Players News

No.72 2004 3月

ようやく春が近づいてきて、陽射しも明るくなってきましたね。

いつか弾いてみたい憧れの曲 D 

バラード第1番 (ショパン)
ショパンの音楽の真髄とも言えるバラードは、全4曲作曲されました。第1番、作品23のト短調のバラードは、ウィーン滞在中の21歳の時に取り組んだ作品です。当時、祖国ポーランドで革命が起こり不安定な情勢だった事が影響したからでしょうか、ショパンの全作品の中で、最もドラマティックです。特に最後のコーダの情熱的な激しさに魅了されます。

☆想い出
中学生の時、ホロヴィッツという大ピアニストのファンで、中でもホロヴィッツが弾くショパンのバラード第1番に憧れました。楽譜を用意して、レッスンの合間に少し弾いてみたりしましたが、とても難しくて、いつかこの曲が弾けたらと、私にとって「目標」となる曲でした。講師として教室のショパン特集の発表会で演奏しましたが、演奏後も新たなスタートとなり、今でも「目標」としている大きな存在です。最近では、映画「戦上のピアニスト」でこの曲を弾いている場面がとても印象的でした。

♪ピアノソナタ「熱情」(ベートーヴェン)
ベートーヴェンのピアノソナタは全部で32曲ありますが、傑作が多い中期の作品群の中で代表的な曲が「熱情」です。同じ頃書き始められた交響曲第5番「運命」と同じく、激しい表現を特色としていて、第1、第3楽章はベートーヴェン特有の嵐のような激しさがあります。そして対照的な第2楽章の深い安らぎが前後の楽章と絶妙なバランスを保って聴き手を魅了します。

☆想い出
学生の頃のレッスンでは、ベートーヴェンを中心に弾いていましたが、人前で弾くのは随分と時間が経ってからです。教室の発表会でベートーヴェン特集を組んだ時に、第2・3楽章を演奏しました。演奏直前に父親が亡くなり、ピアノを続けてこられた感謝を込めて、父との想い出深いベートーヴェンを弾きたいと思いました。私にとって、第2楽章は「祈り」、そして第3楽章は「情熱」です。全楽章を弾ききった時の達成感が素晴らしく、それを求めてファイトが沸いてくる傑作です。