Little Players News
No.86 2005年 5月
新緑が美しい5月。桜の優しいピンクが彩りを添えて素敵な季節ですね。
あなたにとって音楽とはピアノとは? @
音楽が、日々を豊かにするものと思って、レッスンそして自分の練習をしております。 豊かな気持ちというのは楽しい事ばかりではなく、時には壁にぶつかって悩み乗り越える事にも喜びがあると思います。今月より、私や生徒さんの経験談などをまじえながら、音楽との関わりの中でどのような喜びがあり、また、壁をどうやって乗り越えるかなどについて探っていきましょう。
私にとってのピアノ
小学生時代
幼稚園に入る前に買ってもらった、ちっちゃなおもちゃのピアノが私とピアノとの出会いと言えるかもしれませんが、初めはオルガンを習っていました。小学校2年生の時から、ピアノ教室に通い始め、教室のグランドピアノの豊かで美しい音に、すっかり魅了されてしまいました。「エリーゼのために」を渡されたのが、4年生の時。 オルガンでは鍵盤が足りず、「ピアノが欲しい」と両親に頼んだ覚えがあります。 間もなく、念願のアップライトピアノを買ってもらい、とても嬉しかったものの、両親に事あるごとに、「エリーゼのために」を弾いてとせがまれるのには、ちょっと辛くもありました。 自分でも納得のいく演奏ができてなかったのと、それでも「上手だね」と褒められるのが辛かったのです。 演奏を誰かに聴いてもらう事はとても良い勉強になりますし、本来喜びであるはずの事ですが、場合によってはプレッシャーにもなりますね。 実はこの頃はまだ「ピアノ大好き!」といった時期では無く、遊ぶ事に夢中であまり練習もせず先生に叱られたり、「そろばん塾」で、級を取得するのに一生懸命だったり。 それでも、ブルグミュラー、ツェルニー30番、ソナチネなどを弾いていくうちに、だんだんと面白くなってきたのですが、私にとっての大きなきっかけは、6年生の時に渡されたバッハのインヴェンションでした。 単純に見える楽譜の中に、なんて豊かな音楽が詰まっているのだろうと感動しました。 一見簡単そうな楽譜は、いざ弾いてみると、その難しさに驚きます。 その曲は私に、それまでなんとなく関わっていた音楽の本当の深さを教えてくれたのです。 そんな時期、修学旅行を前にして私は膝を壊して入院しました。 走ることが大好きでしたし、中学に入ったらバレー部に入ろうと思っていたのに、激しい運動が出来なくなってしまい、とても大きなショックでした。ところが、ある日、誰もいない音楽室でランゲの「花の歌」を弾いていると、クラスメイトの男子生徒がそれを聴いていて、「是非クラスの代表でピアノを弾いて欲しい」と言ってくれたりといった事があったりして、少しづつ自分の演奏に自信を持てるようになり、人前で弾くのが嬉しく思うようになりました。「私にはピアノがある」という思いが私を救ってくれたのです。