Little Players News

No.120 2008 3月

すこしづつ春に近づいてきましたね。

練習曲(エチュード)⑥

先月に続きショパンの練習曲について、お話したいと思います。

ショパンのエチュード 作品25

作品25として1837年に出版された12曲の練習曲は、1832年から1836年までの時期に作曲されました。 この作品は、リストの愛人マリー・ダグー伯爵夫人に献呈されました。 リストに献呈された作品10の練習曲とは異なった内容を持ち、2つの曲集とも、それぞれの特徴を持って両立しています。 


第1番 変イ長調 『エオリアンハープ』

エオリアンハープとは、風により弦が音を出すという楽器です。「風によって一瞬にしてすべての音が軽やかに鳴るエオリアンハープを頭に思い浮かべるように、また、ピアニストの手からあらゆる種類の幻想的な音のアラベスクが入り交じって流れるように、そして、荘重な低音の響きと繊細なソプラノの音が連なって聴こえて来るようにする。 そうすれば、全体からエオリアンハープの音色のイメージが浮かびあがって来るであろう。 中間部では、和音の波の中からメロディーと平行してテノールの歌が浮かびあがって来る。 この練習曲を聴き終えると、夢の中で見た晴れやかでうっとりするイメージが消え去るように思われ、また、その余韻を楽しみたいと思うであろう。」 というのは、ショパンがこの練習曲を演奏するのを聴いたシューマンの言葉です。


第7番 嬰ハ短調 『恋の2重唱』

ノクターン調の4声体で書かれ、ソプラノとバスの“掛け合い”がテーマとなります。 「この素晴らしい曲に求められる真の音楽的な演奏は、劇的で悲嘆に暮れたような情念と、哀しみの重みで苦しいうめきを表す左手の上に、遠くから聞こえてくるようで、しかし、鮮明で深みのある、感情的には傷つけられた悲しみと優しさを表す響きの右手が漂うようにする。」 と、大ピアニストのアルフレッド・コルトー(1877~1962)は語っています。 コルトーが編集した楽譜(コルトー版)は、私の最も大切な楽譜となっています。


第11番 イ短調 『木枯らし』

4小節のレント序奏は、後から付け足されたといわれています。  ゆったりとした序奏から突然に急速なアレグロ部に入ります。 右手がきらめく6連音の16分音符で下降します。 それに対して左手は常にテーマを朗々と歌います。ショパンのエチュードの中で最もピアニスティックな曲であると共に大変な難曲です。