Little Players News

No.123 2008 6月

なかなか暖かくならない日が続いて、風邪気味の人が多いですね。季節の変わり目ですので健康に気をつけてピアノに向かってください。

練習曲(エチュード)⑨

先月に続きピアノの魔術師といわれたリストの練習曲について、お話したいと思います。

3つの演奏会練習曲

 フランツ・リスト(1811~1886)は1845年にワイマールの宮廷楽長になり、華やかな演奏活動からやや遠のいて、作曲活動に力を注ぎ始めました。 そうした 1848年に作曲されたのが、「3つの演奏会用練習曲」です。 この時期のリストは、新しい音楽思潮の主導者として活躍し、またその作品には未来の音楽を志向する革新があったことから、ワーグナーを初めとする気鋭の音楽家たちがリストのまわりに集まりました。 全3曲にはイタリア語の標題が付けられていますが、リスト自身によるものではありません。 3曲とも美しく、親しみやすい作品であるため、よく演奏され、リストの曲の中でもポピュラーな存在となっています。 練習曲とは思えないほど甘美で詩情にあふれた曲集であることに人気があるのでしょう。

第1曲 『悲しみ』 変イ長調

 即興演奏風に始まる変イ長調の練習曲。 リアト自身が付けたタイトルではないとはいえ、「悲しみ」というタイトルはこの曲の一面をうまく表しています。 長調でありながら、減7和音という短調の属9の和音が多く使われているため、メランコリックな色調を帯びています。 自由で気まぐれな序奏に続いて、夢想的かつ情熱的な歌が途切れがちに繰り返し奏でられます。 

第2曲 『軽やかさ』 ヘ短調

 その名のとおり軽快な速いパッセージに終始して、指の軽やかさが必要とされる曲ですが、同時に非常にデリケートな指先のセンス、そして、それを聴きわける耳が要求されます。  ショパンの即興曲を思わせる趣がありますが、ショパンより技巧的で、特に3度の半音階が非常に高度です。

第3曲 『ためいき』 変二長調

 曲集中、最も有名で親しまれている作品です。 両手の大きなアルペジオの上に、休符をはさんだ短い音が、ためいきを表すかのように旋律(メロディー)がうたわれます。 この美しい旋律はアルペジオを絶えず伴い、途中から両手に交互に現れながら感情の変化を華麗に表現していきます。
♪ 2004年の発表会で演奏しました。 子供の頃から何度もレコードやCDで聴いて、その都度「なんて優雅で美しい曲なのだろう」と感動しました。 実際に練習してみると、大きな跳躍、そして、交差しながら優雅に演奏するのは至難の業で、流石はリストの練習曲だなと思い知らされます。 リスト特有の高音のきらめきが美しい曲で、弾き込んでいく程にその素晴らしさを実感します。 リスト弾きで有名なボレット、アンドレ・ワッツの演奏が素晴らしいです。 皆さんも是非聴いてみてください。