Little Players News

No.124 2008 7月

さわやかな初夏の季節。もうすぐ夏休みですね。

練習曲(エチュード)⑩

先月に続きピアノの魔術師といわれたリストの練習曲について、お話したいと思います。

超絶技巧練習曲 初版

 フランツ・リスト(1811~1886)の14歳の作品と伝えられており、リストはこの練習曲を、自身のために書いたと言われています。 実際に弾いてみると、これが14歳の少年の作品なのかと驚かされます。
12曲から成る練習曲は、その後、幾度か改訂されて、20数年後に『超絶技巧練習曲』として仕上げられますが、そのルーツとなったのが、この12曲の練習曲です。
 20数年もの間、何度も改定し、最終的に、難しさだけでなく、その完成度の素晴らしさでも評価され、現代でも多くのピアニストが演奏する、ピアノに関わるものにとっては憧れの難曲『超絶技巧練習曲』となったのかと思うと、リストの並々ならぬ執念と情熱がうかがえます。

第3番 へ長調

 『超絶技巧練習曲』の「風景」という曲の元になった曲です。 8分の6拍子でバルカロール(舟歌)風な優美な曲想は、メカニカルでありながらも音楽の魅力に溢れていて、まずメロディーの美しさに魅了されます。 恩師ツェルニーの練習曲の発想から脱して、新しい時代の練習曲を書こうとしている様子がうかがえます。 

第9番 変イ長調

『超絶技巧練習曲』の「回想」に対応する曲です。 ここでもメロディーの美しさは言葉に表せない程で、リスト自身もこの曲に深い愛着があったことと思います。
歌曲風でありながら極めてピアにスティックな曲想は、さすがに「ピアノの魔術師」リストならではの作品だと思い知らされます。