田園風景とか牧歌的なとか、のどかな雰囲気であるという意味。勉強中のベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番ニ長調だが、「田園」という標題はベートーヴェンが付けたものではない。他の標題が付いている曲に比べると、かなりマイナーな存在で、あまり演奏会で取り上げられる事がない。

3月、4月とスペインものを弾いたのも、実はこの15番は意外とバランスの難しい曲で、それほど劇的な展開が無いのに長くて、通して弾いてみても、なかなか納得のいく演奏が出来ずにいた。冒頭のD音の同音連打をどう鳴らすか。どれくらいのテンポがベストなのか。悩む…。その日の気分や天気、体調により、この冒頭で演奏がガラリと変わる。まぁ演奏は1回1回が違うものだから、あたり前ですね。

ケンプの演奏を聴いた時、なんて軽やかで美しい世界なのだろうと思った。まるでデュエットのようだと思った。
今日、ようやく初披露。「綺麗な曲ですねぇ」と大人の生徒さんから感想をもらった。やはりデュエットの所がそう感じるのだそうで嬉しかった。しかし、瞬時に掴む和音や、例の何度も現れる3連符+3連符+5連符を全てクリアに弾くのは難しい。

第2楽章は田舎道を黙々と一歩一歩確実に歩いて行く感じが個人的に好き。第3楽章は明快で短い。第4楽章は8分の6拍子で一層軽やかな雰囲気を醸し出す。コーダでは急速なテンポになり華やかに幕を閉じる。この楽章だけ高校生の時にレッスンを受けた形跡があるのだけれど、あまり面白くなかったのか、ほとんど印象に残っていない。しかし今、第1楽章から弾いてみると道が開けていくような、そんな感じがする。

みかこ