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ピアノソナタ17番「テンペスト」

ベートーヴェンというと、いつも苦虫つぶしたような顔で
とっつきにくいという印象があるけれど、10番のユニークなソナタでは
そんな顔は見せない。全楽章が長調で構成され、
この曲を弾くと、私のイメージでは無いという顔をされる。
10番を弾きつつ、次の曲は17番を選んだ。
弟子がテンペストの意味をベートーヴェンに尋ねたところ
「シェークスピアのテンペストを読め!」と言ったのは有名な話だが、
まだ私は読んでいない。(^^;
第1、3楽章は今まで何度か譜読みをしつつ、人前では演奏したことがない。
レッスンでは第1楽章を高校生の生徒さんに演奏してもらった。
TVで有名になった私立高校の生徒さんで、凄く上手な子だった。
コンクール暦もあり、何故こんな田舎町に来たのか理解できなかったが、
彼女のピアノを聴いているうちに、だんだんとその苦悩が見えてきた。
いつも何かに腹を立て、担任や周りの人と絶えず衝突していた。
その怒りをぶつけるかのようにピアノを弾いていた。
発表会のリハーサルでは、こぶしでピアノを叩きつけるように弾いていたようで
見かねて、調律のS氏が「そんな風に弾かなくともピアノは鳴る」と言ったそうだ。
余程の事がなければ、そのような事を言う人ではないので想像がつく。
音大受験を希望しながら、音楽で挫折した恐怖心には勝てず
高3の秋、発表会の後でやめてしまった。
今頃どうしているのだろうと時々思い出す事があって、ため息が出る。
今日は全楽章の譜読みをしたが、第2楽章が難しい。
若い時は、この楽章が好きになれず、弾きたいとも思わなかったが
とても叙情的で美しい曲だと思う。第1楽章の緊張感から解き放たれ
瞑想的で美しい音楽に浸り、流れるように第3楽章へと入っていく。
やはり6大ソナタに入る名曲だなぁと思う。

みかこ