近藤嘉宏ピアノ・リサイタル

2016年5月15日(日)13:30
札幌コンサートホールKitara大ホール

program

●ベートーヴェン

ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2「月光」
第1楽章 Adagio sosutenuto
第2楽章 Allegretto
第3楽章 Presto agitato

ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調Op.57「熱情」
第1楽章 Allegro assai
第2楽章 Andante con moto
第3楽章 Allegro ma non troppo-Presto

intermission

●ショパン

ノクターン第20番〈遺作〉

バラード第1番ト短調Op.23

●リスト

愛の夢 第3番

ラ・カンパネラ

「ノルマ」の回想(ベッリーニのオペラ「ノルマ」の主題によるパラフレーズ)

Encore

ドビュッシー:月の光
ラヴェル:水の戯れ

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近藤嘉宏さんのリサイタルに出掛けるのは2回目です。最初は蘭越パームホールで聴きました。2010年の5月だったので6年ぶりです。早いものです。デビュー20周年記念おめでとうございます。
日曜の午後 Kitara大ホールでピアノ・リサイタルを聴くというのは、何だかとても優雅な気分です。プログラム前半はベートーヴェンの有名なピアノ・ソナタから2曲です。「月光」「熱情」は大好きな曲です。

「月光」の第1楽章は、Adagioでゆったりとした音楽ですが、ソナタの第1楽章はテンポの速い曲というのが一般的でしたから型破りな試みですよね。タイトルの「月光」はベートーヴェンが付けたわけではありません。ベートーヴェンは「幻想風ソナタ」と名付けたようです。近藤さんの演奏はアルペジオがとても綺麗だなというのが第一印象でした。
「熱情」では、「運命」の動機と呼ばれる3連符のリズムが度々登場します。第1楽章の終盤で、緊迫の休符の後にこの動機が激しく登場する箇所があり、どんな風に演奏されるのかとドキドキしながら聴き入りました。「やったー!」という感じのスカッとするフォルテシモでした。第2章から切れ目なく第3楽章へと続きます。Prestoに入る前に、あれ?と思うようなテンポが遅くなる演奏に、ちょっと驚きました。休憩の時にはじめさんに言うと、同じように感じていたようです。「わざとだよね」という表現が面白かったですが、テンポを遅くするのは「!?」でした。前半のベートーヴェンは、綺麗過ぎる演奏が逆に少し物足りなかったです…。偉そうでスミマセン。

後半はショパンから。有名な遺作のノクターンですが、ここで演奏されるのは効果的だと感じました。Encoreでこの曲が演奏されると、「またか」と思ってしまう程、演奏される確率が高い曲ですよね。小品なので、近藤さんは続けて演奏に入りたかったと思いますが、少し拍手が入り、ニコッと笑って客席に応えていました。バラード1番との組み合わせが素敵でした。
リストも馴染みのある「愛の夢 第3番」を終えると、同じように少し拍手が入って、客席に応えていらっしゃいました。余裕を感じます。「ラ・カンパネラ」と有名な曲が続きましたが、今回のリサイタルで1番聴きたかった「ノルマ」の回想は、かなりマニアックな曲です。リストは膨大な数の編曲を残していますが、秋に東京で聴くユリアンナ・アヴデーエワは「ピアニストはもっとリストの編曲を弾くべきだ」とコメントされています。リストファンとしては、とても嬉しく思います。しかし、「ノルマ」の回想はお客さんには受けないだろうと思って聴いていましたが、そんな事はありませんでした。熱心なファンが多いのですね。演奏も素晴らしかったです。

さて、ショパンのノクターン遺作はEncoreにもう弾かれる事は無いので(笑)、何を弾いてくれるのかワクワクしているとドビュッシーの「月の光」でした。アルペジオが神がかり的に美しい近藤さんによる、繊細で美しい演奏。はじめさんも「合っているね」と。最後の音がまだ会場にフワッと残っている、その余韻が優雅でした。近藤さんも「楽しみながら演奏した」とおっしゃっていましたから、Kitaraの音響は素晴らしいのでしょうね。Encoreの2曲目は、ラヴェルの「水の戯れ」。思わず「凄いっ」と小さく叫んでしまいました。印象派の2曲のEncoreが特に素晴らしかったです。丁寧な演奏、澄んだ美しいアルペジオに聴き惚れた日曜の午後でした。

みかこ