アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル

 

2016年10月4日(火)

札幌コンサートホールKitara大ホール
アリス=紗良・オット

program

●グリーグ:叙情小曲集より

●グリーグ:ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラードOp.24
intermission

●リスト:ソナタ ロ短調

 

Encore

●グリーグ:ペール・ギュントより「山の王宮の魔王」

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アリス=紗良・オットさんを聴くのは5年ぶり。2011年の記事を読むと、あの時はショパンのスケルツォ第2番を演奏されたのですね。当時は、あまり好きではなかった曲でしたが、アリスさんの演奏を聴いて「目から鱗」だったと記録していました。あれから5年経ち、今年は何故かスケルツォ第2番にチャンレンジしたのですが、色々なピアニストの演奏を聴いた中でも、アリスさんの演奏が好みでした。

演奏前に、アリスさんからグリーグが今、とても大切な作曲家になっていると、その想いを語られました。ノンストップで弾きたいので、拍手を入れずにお願いします。50分間、グリーグの不思議ワールドを一緒に冒険していただけたら。と挨拶がありました。

グリーグの叙情小曲集は、グリーグが24歳から34年間書き留めた音楽日記のようなものだと思います。全部で66曲あります。パンフレットが無いので、演奏曲目と順番は定かではありませんが、10曲くらい演奏されました。「アリエッタ」から始まるのかなと思っていましたが、なんと「昔々」からでした。渋いですが、凄く好きな曲。私のHPでは、冬のニッカウヰスキー工場を訪れ時の写真に、この曲の調べがピッタリだと思って演奏しました。それにしても、アリスさんの澄み切った美しい音に最初から涙が出そうでした。最後は「トロルドハウゲン婚礼の日」。これは、どうしても舘野 泉先生の演奏を想い出してしまう程、もう何度も何度もお聴かせ戴きました。とても情熱的に、そう髪がバババッと上に跳ね上がる程、ダイナミックに演奏されるのですが、アリスさんも同じように髪がバババッと跳ね上がっていました。ブラボー!! この後、かなり間を置いて、「ノルウェーの民謡による変奏形式のバラード」に入りました。技巧的で、まるでピアノコンチェルトを聴いているような感じでした。激しい演奏の後に休憩を挟んでリストのロ短調ソナタが待っています。

さて、お待ちかねのロ短調ソナタ。前半の淡い黃色のドレスから一転して黒い衣装でステージに登場したアリスさん。なんと舞台の照明も落として、灯りは手元だけという驚きのスタイルで演奏されました。この演出が曲想と相まって、何とも言えない不気味さで怖かったです。そして、甘美な夢見るような音楽に変わり、単一楽章ですからノンストップで30分位続くのですが、終始圧倒されました。通路を挟んで私の隣には小さい子供も居ました。絶対にCDでは聴けない生の演奏でした。アリスさんがピアノを弾くと、会場の空気が動くというか、間違いなく同じ空間で何かが起こっている!そんな感じがしました。時折、薄明かりに激しく手が動いているのが見えたり、全体重をかけて弾いていたり、ペダルを踏み鳴らす音がしたり。衣装も黒いので暗闇に溶け込んでいて、ステージで弾いているのはリストではないかと、はじめさんは言っていました。

演奏が終わると、暫く余韻に浸っていて、アリスさんは座ったままでした。出し尽くしたのでしょうね。立ち上がった時は、放心状態で少しフラフラしていました。いや、ホントに凄かったとしか言いようが無かったです。大好きな曲ですし、かなり多くのピアニストの演奏を聴いていますが快演でした!ただ会場のお客さんは最後の方で、咳をしないで欲しかったです。ここで咳をするのは罪!みたいな箇所でした。せめてハンカチを当てるとか配慮して欲しいものです。

アンコールの時は、もう足取りも軽く、まるでバレリーナのようにステージを往復されていました。「山の宮殿の魔王」も、これまた凄まじい曲で、またまた迫真の演奏。流石のアリスさんも、ぷは~と息を吐いていたのが可愛らしかったです。拍手とブラボーが鳴り止みませんでした。いやはや凄いリサイタルでした!はじめさんは「凄いものを見た!」と、かなり興奮していました。こういうリサイタルを聴くと、私も頑張らねば!と思います。5年前より、ますます演奏に磨きがかかっていて素晴らしかったです。これからも楽しみです。足は、もちろん裸足したよ。

みかこ