小山実稚恵の世界「音の旅」

6月8日(木)
札幌コンサートホールKitara小ホール

第23回~祈りを込めて~くすんだ青緑:湿気・さらに奥深くへ

program

●シューマン:幻想小曲集 作品12

●ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110

Intermission

●シューベルト:ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D.960

Encore

●ショパン:ノクターン遺作 ハ短調

●ショパン:ノクターン 第13番 ハ短調

●バッハ:平均律 第1番 ハ長調よりプレリュード

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久しぶりに小山実稚恵さんの「音の旅」シリーズを聴きに出掛けました。全24回12年に及ぶこのシリーズも残すところ2回。最終回のチケットを演奏会前の優先発売でGETしました。12年前に第1回、2回と参加したのですが、プログラミング、イメージ、色で表現されていて、とても素敵だなぁと思いました。今回の「くすんだ青緑」は好きな色合いです。

演奏の前に小山さんからprogramについてお話がありました。シリーズを通して軸となっているのがシューマンであるとの事。第1回は大好きな幻想曲、第2回はソナタが演奏されました。今回の幻想小曲集は、中学生の時に学校の行事で演奏する事になった第2曲「飛翔」を含む全8曲。リサイタルで全曲演奏は意外と聴く機会が無かったです。中学生の頃はルービンシュタインのレコードがお気に入りでした。しっとりとした「夕べに」が耳に入ってくるのが心地良くて、よく聴いた事を覚えてます。シューマンって誰よりもファンタジーな世界感を持っている作曲家ですよね。1曲1曲がチャーミングで本当に素敵な演奏でした。最終回のシューマンも楽しみです。

2曲目はベートーヴェンの後期の作品。31番。最終回は32番。ベートーヴェンのピアノ・ソナタをライフワークにしている私はこれは絶対に聴きたいと思っていました。前回の30番は残念ながら聴き逃してしまいました。31番は誰にも献呈されなかった作品。第3楽章の嘆きの歌は聴くたびに、その苦難した心情を思い浮かべて涙が出ます。その後のフーガの力強さは、まさにベートーヴェン!感動的なソナタだと思います。

最後に演奏されたシューベルトの最後のソナタ21番。この作品を表現する言葉がみつからないと小山さんはプログラムノートにコメントされています。冒頭のお話をお聞きして、哀しさ、優しさ、慎ましさなどがギッシリと詰まっていて、シューベルトの気持ちが痛いほどに伝わってくるとの事です。私は、舘野泉氏の演奏をよくお聴きしましたが、シューベルトとじっくり向き合うと魂が天上の世界に行ってしまって、しばらく現実に戻ってこれなくなるとお話しされていた事を想い出します。今回のタイトルである祈りを最も感じる作品でした。ブラボー!

Encoreは3曲演奏されるのがお決まりのシリーズ。ショパンのハ短調の遺作のノクターンが演奏され意表を突かれた感じでした。続いてもショパンのノクターン第13番。若い時に「講師演奏」という好きになれない文字がprogramに載って演奏した機会がありました。ノクターンというよりバラードのような感じ。ハ短調ってドラマティックでカッコイイすよね。この流れからすると3曲目は「革命」かなと思いきや、バッハのハ長調のプレリュードとは!次に繋がるのだなと感じさせる素敵なEncoreでした。「音の旅」に続く新企画があるとの事でこれからも増々楽しみです。

みかこ