「リストの手紙」/及川浩治ピアノリサイタル

 

10月21日(金)
リスト生誕200年記念ということで、楽しみにしていた及川浩治さんの「オール・リスト」に出かけました。午後6時過ぎの中島公園。紅葉が綺麗でした。少し早目に行って、年内最後の12月の小山実稚恵さんのチケットをゲットしました。この日は、どちらのホールもコンサートがあり賑わっていました。

 

~フランツ・リストへのオマージュ~

●婚礼 ~巡礼の年第2年「イタリア」より

●ラ・カンパネラ

●3つのペトラルカのソネット ~巡礼の年第2年「イタリア」より
ペトラルカのソネット 第47番、第104番、第123番
●愛の夢 第3番
●献呈(シューマン/リスト編曲)
●メフィストワルツ 第1番

●イゾルテの愛の死 ~「トリスタンテとイゾルテ」より(ワーグナー/リスト編曲)
●ピアノソナタ ロ短調

アンコール
●コンソレーション 第3番
●雨だれのプレリュード(ショパン)

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キタラでは何度もピアノリサイタルを聴いていますが、今回の中央ブロックの10列目は、視界が良く、落ち着いて演奏を楽しめる席だなと思いました。ただ、不幸にも、はじめさんの隣に座った方が傍迷惑な方でした。「曲に入り込むのは良いとして、身を乗り出して、演奏を壊すような拍子で終始手と身体を動かすので、集中して聴くには目を瞑るしか無かった…」。確かに、私もその方の動きは煩わしかったです。かと言って注意するのも何だか気まずくなりそうで困りました。コンサートは、案外こういう事にも左右される事があり、気持良く聴くためにも周りに迷惑にならないように自分も気を付けたいと思います。

前半の演奏は、「ペトラルカのソネット」から「献呈」までのプログラム構成が私には、ちょっと物足りない感じでした。叙情的な歌曲が5曲続き、それが最後の「メフィストワルツ」にとって効果的な狙いのプログラム構成だったのかも知れません。はじめさんも、「メフィストは目を開けて聴きたかった」と言っていました。残響の多いホールなのにペダルがやや多いなとか、ピアニッシモと書かれている部分も強烈なフォルテだったり、意表をつかれましたが、生き生きとして躍動感があり、弾き終えると同時に立ち上がるパフォーマンスもリストらしかったのではと思います。中間部のテンポの揺らし方、歌い方が素敵でした。そうそう、前半のグリッサンドは思い切り爪の音がしたので痛そうでした。(^^;

後半は、「ロ短調ソナタ」に入る前に、暫く間があり、この大曲に挑む緊張感というか集中力が感じられました。何しろ演奏時間30分の単一楽章形式ですから、弾き手にも聴き手にも大変な曲です。この曲が発表された当時は、あまりにも独創的かつ革新的だったため、賛否の評価で激しい論争が起こり、その論争は長い間続きました。しかし、「ロ短調ソナタ」は紛れも無く、リストの最高傑作であり、ロマン派を代表する重要なピアノ作品です。「ファンタジー(幻想曲)」の返礼としてシューマンに献呈されています。私もリストの作品中、最も好きな曲で、中学生の頃からいつかこの曲が弾けたらと強い憧れを抱いてきました。聴くものを虜にし、圧倒する悪魔的な旋律、天使のような優しい声で囁くように歌う旋律。悪魔と天使が交互に現れるので、魂を揺さぶられるような感覚になります。この曲を聴くと、リストの生き方そのものではないかと思うのです。今日の「ロ短調ソナタ」は構成がやや甘く、まだ熟成されていないような感じがしましたので、できれば、何年か後にもう一度聴くチャンスがあればと願っています。

プログラムに「コンソレーション」はありませんでしたが、きっとアンコールで演奏されるに違いないと思っていました。なんと1曲目に演奏され、喜ぶはじめさんでした。隣の迷惑なご婦人も「綺麗な曲だねぇ」と心から言っていました。きっと音楽が大好きな方だと思うので、演奏中のパフォーマンス?!はピアニストに任せましょう…。もうアンコールは無いかなと思っていたら、最後はショパンの「雨だれ」。ん、オール・リストプロでショパン?と思いましたが、これが、とっても良かったです。また、エキサイティングなリサイタルを楽しみにしています!

みかこ