マルティン・ガルシア・ガルシア / ピアノ・リサイタル2023

夢中になって聴いたショパンコンクール。中でもガルシア・ガルシアさんの歌に溢れた演奏に惹かれました。昨年の6月にキタラでピアノリサイタルを聴く機会に恵まれ、とても感動して、また聴きたいと思っていましたが、こんなに早く実現するとは。

2023年6月5日(日)18:30開演
札幌コンサートホール kitara 大ホール
ピアノ:マルティン・ガルシア・ガルシア

 

Program

F.Chopin(F.ショパン)

●4つのマズルカOp.33

●舟歌 嬰へ長調 Op.60

●ワルツ第1番 変ホ長調「華麗なる大円舞曲」Op.18

●ポロネーズ第5番 嬰へ短調 Op.44

●ワルツ第8番 変イ長調 Op.63-3

●ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2

●3つのワルツ Op.34
1.変イ長調 Op.34-1
2.イ短調「華麗なる大円舞曲」Op.34-2
3.ヘ長調 Op.34-3

intermission

R.Schumann (  R.シューマン)

●3つの幻想的小曲集 Op.111
1.ハ短調
2.変イ長調
3.ハ短調

●交響的練習曲 Op.13
1.Theme:Andante:嬰ハ短調
2.Variation:嬰ハ短調
3.Etude Ⅰ(Variation 1):嬰ハ短調
4.Etude Ⅱ(Variation 2):嬰ハ短調
5.Etude Ⅲ:Vivace ホ長調
6.Etude Ⅳ(Variation 3):嬰ハ短調
7.Etude Ⅴ(Variation 4)嬰ハ短調
8.Etude Ⅵ(Variation 5)嬰ハ短調
9.Etude Ⅶ(Variation 6)ホ長調
10.Etude Ⅷ(Variation 7 )嬰ハ短調
11.Etude Ⅸ Presto possibile 嬰ハ短調
12.Etude Ⅹ(Variation 8) 嬰ハ短調
13.Etude Ⅺ(Variation 9)嬰ト短調
14.Etude Ⅻ(Finale)ニ短調

encore

●モンポウ:子供の情景よりNo.1

●ラフマニノフ:音の絵 Op.39-5

●ラフマニノフ:楽興の時 Op.16-1

●モンポウ:路上で悲鳴が上がる

小曲でも大曲を聴いているように感じる


颯爽とステージに登場したガルシアさんは、昨年よりちょっとスリムになったように感じました。今日も歌いながらの演奏。リラックスして演奏に没頭しているように見えます。美しい音が広がり、聴衆はたちまちガルシアさんの演奏に惹き込まれました。演奏が終わると、拍手をしたくなるものですが、ピアニストが立ち上がったら拍手をしたら良いと思います。

それにしても、「舟歌」や「ポロネーズ第5番」以外は小品なのに、はじめさんは「大曲を聴いているように感じる」といっていました。前半は「舟歌」が特に素晴らしくて、ため息が出ました。

会場限定のCDはすぐに売り切れそうだからと、はじめさんは迷いもなく購入していました。そのアルバムにも入っていましたが、3つのワルツが前半の締め括り。最後は「猫のワルツ」。可愛らしい曲ですが、ガルシアさんが弾くと全く別の曲のように聴こえます。そして、昨年よりも更に磨きがかかっているのが分かります。とにかく音が美しく、音の幅が凄い。

ピアノはオーケストラ

後半は、ガルシアさんの演奏では初めて聴くシューマン。3つの幻想的小曲集からですが、3つ並べると大曲になりますね。

「交響的練習曲」はピアノという楽器の可能性を探求して作った曲。変奏曲と練習曲という2つの性格を融合させ、ピアノ1台でオーケストラのような多彩な響きや華麗で壮大な音楽効果を引き出した渾身の傑作。ヴィルトゥーゾな演奏を必要とし、ピアノの魔術師といわれたリストの音楽ではないかと思うくらいです。

隣りで聴いていた はじめさんは、吉野家で牛丼を食べてきたはずなのに、お腹が鳴っていました。ガルシアさんの小気味の良いダイナミックなフォルティシモがお腹に響くからなのだといいます。対照的に軽やかな透明感のある音が本当に美しい。

いつまでも聴きたくなるアンコール

あんな大曲の後だから、アンコールはきっと1曲だろうねと、はじめさん。開演が18:30というのは、今宵もたっぷりアンコールを弾いてくれるはずと私は期待していました。1曲めは何だか魔法のような音楽でした。

2曲目はすぐにラフマニノフだと分かりました。哀愁のある旋律でダイナミックで大好きな曲です。スタンディングオベーションのお客んさんがどんどん増えて、ステージに登場するたびに大きな拍手が鳴ります。そんなお客さんに応えてサササッとピアノに向かうガルシアさんがチャーミング。まさかの4曲目も魔法のような響きで、これはモンポウかなと思いました。「路上で悲鳴が上がる」という曲なのですね。

今宵も心から感動したコンサート。どうしたらあんな美しい音を奏でられるのか。一音一音大切に音を鳴らすことに神経を注ぎ勉強していきたいと思いました。

みかこ