「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の全4巻で構成される輪廻転生をテーマにした壮大な物語。三島由紀夫の「豊穣の海」より第2巻「奔馬」を読み終えた。
「春の雪」も面白かったけれど、「奔馬」はドキドキするほど面白かった。20歳で死んだ清顕。そして、彼の予言の通り滝の下で転生した飯沼 勲に本多は出逢う。
三島由紀夫は年老いて醜くなるのを一番恐れていたようだ。1巻も2巻も主人公は20歳で亡くなってしまう。それにしても、「奔馬」のラストは衝撃的で読みえたとき震えた…。
トレーニングの後は、はじめさんが淹れた珈琲を飲むが、三島由紀夫を読むときは紅茶が合うように思う。
奈良に咲く「笹百合」を投獄中の勲の想い人である槙子(まきこ)から差し入れがあった。彼女は勲を助けるために命がけで偽証するけれど、一度結婚に失敗した苦い経験から、勲が牢に入っていることを喜んでいた。
獄中での生活で勲は研ぎすまされた感覚を持つようになり、槙子の手紙から勲の入獄を楽しんでいるように感じ取ってしまう。
38歳になった本多は、判事を辞めて勲を助けるために弁護士になる。裁判の結果、勲は無罪にはならなかったが釈放される。しかし、今回も本多は清彰に続いて勲の命を救えなかった。勲は念願の自刃を決行してしまう。
「正に刀を腹に突き立てた瞬間、日輪は瞼の裏に赫奕(かんやく)と昇った。」
ラストのこの一行に全てが集約されていると思った瞬間、私は暫し震えた。