毎月、教室で発行している新聞(4月号)から抜粋です。
♪今月は、ロシアの作曲家ムソルグスキー(1839~1881)についてお話したいと思います。 亡くなってから有名になった作曲家で、不幸な事に生存中は世間に全く認められなかった作曲家なのです。
19世紀のロシアでは、ヨーロッパの要素を巧みに採り入れたチャイコフスキーに対するアンチテーゼ(反対の考え方)のような存在として「ロシア5人組」が誕生しました。 メンバーは、リーダーのバラキレフ、キュイ、ボロディン、リムスキー=コルサコフ、そしてムソルグスキーです。
個性的な人が多いといわれるロシア作曲界の中でも、ムソルグスキーの存在は異彩を放っています。 裕福な家庭に生まれ、幼少の頃からピアノを弾いていたムソルグスキーは、役人として社会人になりながらも音楽を続けますが、なかなか世間に受け入られず、晩年はかなり悲惨な状況へと追い込まれていきます。
無名とはいえ、才能は誰よりも素晴らしいものを持っていましたが、不幸な事に、生前中は彼の音楽は全く認められませんでした。 生活も苦しく、アルコール依存症も深刻となり、40年余りという短い生涯にピリオドを打たねばならなかったのです。
皆さんも、この曲の冒頭を聴いたら、「聴いたことがある!」という程の有名な作品です。 『展覧会の絵』は、ムソルグスキーの友人であり、兄のように慕っていた画家ヴィクトル・ハルトマンが40歳の時に亡くなり、その遺作展を歩きながら、そこで見た10枚の絵の印象を音楽にしたものです。
「プロムナード」という短い前奏曲、あるいは間奏曲が5回繰り返して挿入されているのが特徴的で、この「プロムナード」は、ムソルグスキー自身の歩く姿を表現しています。 次の曲の雰囲気と調性を的確に感じて作曲されていますので、聴いていて繋がりが見事です。
演奏時間が30分を超える大曲なのですが、私はコンサートで何度も聴く機会がありました。 そして、いつもあっという間に終曲の「キエフの大門」が奏でられるのですが、この作品を聴くたびに、ムソルグスキーの並々ならぬ才能に驚かさると共に、この大成功を生前に知って欲しかったという気持ちでいっぱいになります。 原曲はピアノ組曲で、ピアノリサイタルで聴くことがほとんどですが、この曲を有名にしたのは「オーケストラの魔術師」といわれるラヴェルがオーケストラ編曲をした事によって世界的中で演奏されるようになりました。
裕福な家庭で育った時の優雅な肖像画と、晩年、深刻なアルコール依存症と貧困と心の拠り所を失って窮地に立たされたあの有名な肖像画を比べると、本当に不幸な作曲家だったなぁと思います。
代表作に「禿山の一夜」という曲もありますが、スペースが足りなくて掲載できませんでした。こちらは、聖ヨハネ祭という夏至の夜のお祭りを楽しみにきた若者たちが、魔物たちの集まりに出くわし、さんざんな思いをした後、夜明けと共に魔物たちが消えて行くまでを見事に表現しています。
「展覧会の絵」は、抜粋で数曲だけ弾いたことがありますが、やはり全曲弾かないとと思っています。勉強しなければならない曲が、まだまだ山のようにあり、途方に暮れるのですが、それでも出来ることを一歩一歩やっていくしかありません。それと、生徒さんに出来るだけ興味を持ってピアノに向かってもらえるように努力したいと思っています。色々な作曲家の様々な作品を紹介して行くことで、自らも研究していけるように。かつて、私の師が私にそうしてくれたように。
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