ピアノでがおらないで

今年最後の楽譜の大量発注で、札幌から楽器店担当の人が届けにきてくれました。冬は車に乗らないので助かりました。この時期の大きな立て替えは大変ですが、いつでも対処できるように楽譜は確保しておかなくちゃいけません。昼食前に届いた楽譜を本棚に並べていると、電話が鳴った。

「冬休みだけピアノのレッスンを受ける事は可能ですか?」
「はい、出来ます」
「来春、合格した保育科の授業でピアノは必要なので、今現在、習っているのですが…
週に3回も教室に行って、バイエルを10曲づつ宿題に出されて、弾けなくて、がおって、塞ぎこんでいます…」
という、お母さまの説明を聞いて、びっくりした。
母も時々「がおる」という表現をしていたが、具合が悪くなるという意味。

学校からバイエル60番迄弾けるようにというように言われているようだ。レッスンを引き受けた先生が間に合わないからと一生懸命になり過ぎたのかも知れない。週に3回も1時間レッスンをしていたようなのだ。
お話を伺って、私の考えを言った後に、少ししてから、娘さんから電話があった。
「全然、弾けないのですが…」
「ん。だから習うんじゃない?」
少し間があって、ちょっと安堵したように感じられた。
ピアノは本来は楽しいものだし、将来、幼稚園の先生になるかも知れない人がピアノ嫌いになっては困るのだ。
習っていた先生には断りの電話を入れたようで、すぐにでもレッスンをして欲しいと言われ、今週レッスンする事になったが、「バイエル60番迄」という事に拘り過ぎずに、まずは楽譜を読めるようにレッスンしようと思う。

昼食後、寛いでいると、今度はピンポンが鳴った。発表会が終わった後に辞めた生徒さんだった。辞めた理由は、遠方からなので月に1,2度のレッスンをしていたのだが、学校の授業で必要に迫られているので、毎週通える教室に行きたいというものだった。それは意欲も出てきたからなのでしょう。札幌の中でも遠い場所から何年も通って来られて、余市に在住の時と合わせると14年間にもなる。だから「辞めたと思っていないから、いつでもまた来てね」と言うと、彼女はボロボロと泣きそうになっていた。そして、ワインを頂いてしまった。
ん、それにしても、わざわざ遠くから来てくれたけど、もし不在だったらどうしたのかしらと思った。それが本当に彼女らしいなと思った。またいつでもレッスンに来てください!

みかこ