良きライバル

グループレッスンで年齢が近い生徒さん同士は良い意味でのライバル意識を持っているようだ。ただ、テキストが進んでいるとかそういう事ではなくて、どういう演奏が魅力的で、人の心を打つ演奏が出来るのかという事をもっと研究して欲しいと思う。

中学生の頃、私は部活に入っていなくて、授業が終わったら帰宅してピアノの練習を3時間以上やる事が日課だった。それを音楽の先生だった担任にも話して先生も納得してくれた。担任からは、全校生徒が集まった時の校歌や応援歌などの伴奏を任されていた。一つ下の学年に、とてもピアノの上手な生徒が転校してきた。彼女はすぐに合唱部のピアノ伴奏の担当になり、華麗なピアノを披露して、たちまち学校のピアニスターになった。その演奏を聴いて衝撃を受けたが、彼女は彼女だと思い、また自分の練習に明け暮れていた。

そんなある日、ピアノの先生から宮沢明子というピアニストのプライベートレッスンを受けてみないかと言われ、即答で受ける事に決めた。受講曲はベートーヴェンのピアノソナタ第5番。会場には同じ学校の一つ下のピアノの上手な彼女の姿があった。私の前にレッスンを受けていたのでドア越しに先生と聴いた。ツェルニー40番のエチュードを弾いていたのが意外だった。先生は「粒が揃った綺麗な演奏ね」とおっしゃっていた。端正な演奏だなぁと私も思った。私はというと、演奏する時に無駄に身体が動くのを注意された記憶がある。そして、ベートーヴェンを勉強するならヘンレ版を使いなさいと。

高校の時はクラスに3人も凄く上手な人が居て、彼女たちはコンクールにも果敢に参加していた。そして、同じ音大へ進んだのだが、もう周りには凄い人だらけで、くじけそうになった。一番仲の良かったYちゃんも、私よりも手が小さいのに抜群に上手くて、どうしたらYちゃんのように弾けるだろうかと羨ましく思ったものだ。Yちゃんは、英文科だったかな別の学校を卒業して、ピアノを学ぶために入学したので私よりもお姉さんだった。優しくていつもニコニコしているYちゃんだったが、ピアノに向かうと変貌する。それがまた魅力的だった。Yちゃん、お元気ですか?

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