彼のための音楽を 彼が弾く Vol.3

舘野 泉 ピアノリサイタル 2009に出かけました。舘野先生は73歳。母も同じ歳です。ちなみに長嶋茂雄さんとも同じです。ピアノ講師になりたての頃からずっと聴いていますから、最も多く聴いているピアニストです。

開演前にプログラムノートに書かれている文章を読み心を打たれました。「~8年前の65歳の時脳出血で倒れ、半身不随になってこんなに長く生きられこんなに長くピアノを弾けると想像だにしていなかった。

ただ一日一日を生き、一日一日ピアノを弾いてきただけである~」リサイタルをバリバリこなしてきた舘野先生が突然倒れ、左手のピアニストとして再出発するとは私も想像だにできなかった事ですから。

昨年10月17日のコンサートで先生にしては珍しく曲目の変更がありました。マグヌッソンという作曲家のピアノソナタでした。大変な難曲で、今はまだ演奏するべきではないと決断された作品。恐らく初めてこのような台詞を聞いたと思います。先生がおっしゃるのだから余程の事なのでしょう。そして、今年この作品を演奏する事を約束されたのです。

あれから私も「マグヌッソン」という名前を忘れずに覚えていたのが、なんだか自分でも不思議に思います。いよいよ、その作品が聴けるとワクワクしていると先生から面白いお話を伺いました。

昨年の5月にこの曲が送られてきたそうですが、「楽譜には何も書かれてない」音符は書いてあるのだけれど、どう演奏するべきなのかが何も指示されていないという事でした。先生は、それならご自身で解釈して弾いてやろうと思ったそうですが、恐らく今までの中で一番の難曲に出会ってしまったようでした。

例えていうなら、原始の人間が初めて鯨を見て感じた畏怖の念のようだと。面白い事に今年の5月にまたマグヌッソン氏から楽譜が送られてきたのですって。今度は細やかに書かれていて、なるほどこうなるのか!と先生は思ったそうです。

この作品に惚れ込んでいるから、これから何年も弾き続けていきたいと熱く語る先生に私もまた惚れ直したというか、恐るべし73歳。

今回のリサイタルで嬉しかったのは右手を積極的に使っている事でした。感極まっているところに、アンコールの2曲を聴いて、もうボロボロと涙が出て止められませんでした。あれほど叙情的な演奏ができるピアニストがカッチーニの「アヴェ・マリア」を弾くのは反則ですよ……

スクリャービンの「ノクターン」は何度聴いても、ため息が出る素晴らしい演奏です。
ますます進化している現在進行形のピアニスト。恐るべし73歳!来年は演奏生活50周年ですね。素晴らしい事です。

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