年老いたリストを指して言った有名な言葉。聖なるものと世俗的なものが同居するという意味なのだろう。ショパンと1歳しか違わないリストだが、ショパンは39歳で亡くなったのに対し、リストは75歳まで長生きした。その生涯に1,400曲以上もの作品を書いたのだという。しかし、実際に知られているのは200曲にも満たないのではないかとも。他の作曲家と違うのは、オリジナルの他に編曲ものが桁違いに多いこと。オペラ、オーケストラ、歌曲などリストの手にかかると何でもピアノ譜になってしまうのだから凄い。印象派のドビュッシーや、ラヴェルにも多大な影響を与え、音楽史上最も早く調性から離脱しようともした作曲家。メフィスト・ワルツの第4ワルツとして書かれた「調性の無いバガテル」(後に第4ワルツは別に書かれた)は、音楽史上最も古い無調の曲で、シェーンベルクの編み出した12音技法とは違う独自の旋法だったようだ。リストが亡くなって70年も経った1956年にメフィスト・ワルツ第4ワルツと共に発見されたという。よく耳にする作品だが、そういう経緯がある事は知らなかった。野本さんの解説文を読んで「悪魔の音程」なるものを知った。「調性の無いバガテル」の冒頭で使われているのは、BからFの減5度。3つの全音が「悪魔の音程」、”トリトヌス”。異名同音の増4度も同じ。リストは「私は調性を抹殺したい」と、音楽史上初めて「調が無い」ことを宣言した。後にバルトークやスクリャービンらによって道が究められていくというのだから、リストの存在は、やはり凄い。
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