2011年1月16日(日)
場所:札幌コンサートホールKitara大ホール
ピアノ:アリス=沙良・オット
話題の新鋭女流ピアニスト、アリス=紗良・オットのリサイタルに出かけました。札幌は記録的な大雪で、日曜の午後1時半からのコンサートでしたが、遅れて到着する人が多く、会場は落ち着かない様子でした。
TV放送で「情熱大陸」やピアノリサイタルを何度か見たことがありますが、アリス=紗良・オットさんは、とてもチャーミングな方ですね。それにしても、デビューアルバムがリストの「超絶技巧練習曲集」だというのですから、恐れ入ります。
スレンダーな赤のドレスでステージに登場。アリスさんはモデルさんのようにスラリとして、歩き方も演奏する姿勢もとても美しい。プログラムはメンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」から。タイトルは厳かでなんだか近寄り難いですが、なかなか良い曲なのです。最初の印象は、しなやかな指と、その指から紡ぎ出される美しい音。容姿も美しいですが、一音一音が完璧にコントールされた演奏で、早速はじめさんは「なんて、柔らかいのだろう。最初の音を聴いて驚いた!」と言っていました。続いてベートーヴェンのピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」。これがお目当てでチケットを取りました。以前、TV放送で「熱情」と「ワルトシュタイン」を聴いた時は、やや荒っぽい感じを受けましたが、とても丁寧に終始チャーミングな音で歌い上げるので、ちょっと意外でした。第1楽章が終わると拍手が入りましたが、ニコッと笑ってすぐに集中していました。暫くして第2楽章が始まりましたが、その幻想的で美しい音に会場のざわつきも収まり、やがて遠くの方から静かに聴こえてくる第3楽章に入ると、優しく慈しむようなアリスさんの表情が素適でした。「こんなチャーミングなワルトシュタインは初めて聴いた」と、はじめさんは言っていましたが、ベートーヴェンだという事を忘れてしまうようなアリスさんの演奏でした。そして、この曲をとても大切にしているという事が伝わってきて、なんだか暖かい気持になりました。
後半はオールショパン。華麗なる円舞曲作品34の3つのワルツ、6番「小犬」、7番と続きました。最初の2番の演奏後に拍手が入りましたが、ニコッと笑ってまた集中していました。そう集中力も素晴らしいです。情感たっぷり、メランコリックに歌い上げるので、会場の皆さんもうっとりとして聴き入っていました。プログラムの最後はスケルツォ第2番。「小気味の良い演奏は見ていて楽しくなる」と、大絶賛のはじめさん。チャーミングな音と凄まじさも兼ね備えて自由自在。前の方に座っていましたので、スケルツォ2番では、音が跳躍する時に呼吸のような、低い唸り声も聴こえてきて迫力がありました。優雅に確実なタッチで紡ぎ出される音は本当に美音です。個人的には、この曲はあまり好きではないのですが、今日のアリスさんの演奏を聴いて「目から鱗」。随分イメージが変わりました。
アンコールは、ショパンのノクターン遺作cis moll。アンコールにこの曲を演奏するピアニストは多いですね。必ずといって良いほど弾かれるので、たまにはノクターン8番とか「子守歌」とか弾いてくれないかしらと思います。(^^; 次は「ラ・カンパネラ」が演奏されました。今年はリストイヤーなのに「全然騒がれないないねぇ」なんて、はじめさんも言っていましたので、これは嬉しかった。先日TVでアリスさんの「ハンガリー狂詩曲第2番」を聴いたばかりですが、アリスさんの主張が感じ取れる演奏に好感が持てました。「ラ・カンパネラ」もテンポを自在に操り、凄まじい気迫で弾ききると、会場は大フィーバー。割れんばかりの拍手に何度も何度もステージに登場するアリスさん。もうアンコールは無いだろうと思っていましたが、最後に「エリーゼのために」を弾いてくれました。ちょうど練習中のはじめさんは「とても勉強になった」そうです。痛風で歩行困難のためキタラの駐車場に車をお世話になりましたが、じっとして座っているのも辛そうでした。しかし、素晴らしい演奏を聴いて、来た甲斐があったと喜んでいました。ロビーでのサイン会は長蛇の列が出来ていました。凄い人気ですね。これからも注目したいピアニストです。
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