今年12月30日で指揮活動を引退される井上道義氏。札響とは今回が最後になるということで、寂しくなるなと思いました。
2024年5月26日(日)13:00開演
札幌コンサートホール kitara 大ホール
指揮:井上 道義
ピアノ:北村 朋幹
管弦楽:札幌交響楽団
ロビーコンサートから
珍しく1階ホワイエにて開演30分前から10分程度ですが、ロビーコンサートがありました。ロビーにいた大勢のお客さんは熱心に耳を傾むけていました。
演奏されたのはミヨーの弦楽四重奏第1番より、第1楽章&第3楽章でした。開演前に美しい音楽を聴くことが出来てリラックスできました。
武満 徹:地平線のドーリア~17の弦楽器奏者のための
キタラで井上道義さん指揮のコンサートを聴いたのは、2009年のクリスマスコンサートでした。あの日は夜のコンサートで、帰宅してから仙台旅行が決まっていたので函館へ走ったのです。とても天気が良かったのに黒松内あたりから物凄い雪と強風で、明け方ようやく函館に辿り着いたことを思い出しました。
先日は小ホールで鈴木大介さんによる武満作品を聴いたばかりですが、今回は井上さんの指揮による武満徹の初期の人気作品。ドーリア旋法による約15分の不思議な音楽。指揮者の前に8人、背後に9人の弦楽器奏者が並び、音だけはなく視覚的な遠近感を演出した作品だというのですから驚きです。
地平線を書く武満さんは、荒涼たる砂丘の風景があったのではないかとプログラムノートに記載されていました。
武満 徹:アステリズム~ピアノとオーケストラのための
この作品は今演奏会が札響初演とのことです。ピアニストは2022年のPMFに出演された北村朋幹さん。ステージは大掛かりなチェンジが行われ、P席に居た私たちは目を丸くしました。ピアノとチェレスタが近い距離に置かれました。
最初はハープとピアノで静かに始まりました。チェレスタの金属音が星の集まりを感じさせます。そして後半。徐々に音が膨らんでいき、凄まじい大音量でキタラのホールがメリメリッとなるような、かつて聴いたことがないほどの絶叫のような音の塊でした。井上さんの限界まで持って行く指揮ぶりも凄まじかった。倒れるのではないかと怖くなるほどでした…..!
拍手喝采。ステージに何度も登場の北村朋幹さん。アンコールはやはり武満徹さんの曲で「遮られない休息」より『愛の歌』でした。
クセナキス:ノモス・ガンマ
いつもより長い30分の休憩から戻ると、ステージは指揮者を円状に囲む配置。「こんなの見たことが無い!」と演奏が始まる前から興奮気味のはじめさん。演奏前に井上さんによるプレトークがありました。
「音楽の建築家」といわれるクセナキスの作品で「ノマス・ガンマ」も今演奏会が札響初演です。奏者が指揮者の井上さんを取り囲むように配置されているので、井上さんがクルクルと目まぐるしく動いての指揮です。難しい作品だと思いました。音楽を聴きながら、不思議で神秘的な体験をしているようでした。とても聴き応えがありました。
ラヴェル:ボレロ
いよいよラストタクト。キタラでは3回目のボレロです。こちらも円形配置のまま演奏されました。とにかくこのステージを何も遮らずに見れたP席、井上さんの真正面の席は最高でした。そして、何よりも照明の演出が素晴らしくて感動しました。
真っ暗にして、ソロ奏者のフルート、クラリネット、ファゴットにピンスポットが当たるのですが、よくこんな凝った演出ができたものだと驚きました。ボレロといえば、小太鼓ですよね。最初から最後まで終始一定のリズムを刻む。木管から始まり、徐々に金管楽器へと進み音量が増していく。
少年時代にバレエダンサーを目指していたという井上さん。まさに踊りながらの指揮でした。やがて音楽は、とてつもない厚みになりクライマックスを迎ますが、これはいつ聴いても鳥肌が立ちます。ブラボーの嵐。本当に今年引退されるのだろうか、まだまだやれるのではと思うくらいエネルギッシュな指揮に熱烈な拍手が鳴り止みませんでした。札響の演奏も素晴らしかったです。
魂のボレロ、情熱のボレロ。札幌でのラストタクトに大好き過ぎるボレロを聴かせてもらって大感謝。井上さんは本当に人を喜ばせたい方ですね。最高でした!
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