パリ生まれのフランスのピアニストであるアンヌ・ケフレックさんのリサイタルを初めて聴くことができました。現代を代表するピアニストで国際的な舞台で活躍を続けられています。
全席完売御礼!
2024年3月9日(土)14:00開演
札幌コンサートホール kitara 小ホール
ピアノ:アンヌ・ケフレック
program
● J.S.バッハ/ブゾーニ編:さまざまな手法による18のライプツィッヒ・コラール集より
いざ来ませ、異邦人の救い主よ BWV659a
● J.S.バッハ: 協奏曲 ニ短調 BWV974より 第2楽章「アダージョ」
協奏曲 ニ短調 BWV596より 第4楽章「ラルゴ・エ・スピッカート」
● スカルラッティ:ソナタ ロ短調 K.27
ソナタ ホ長調 K.531
ソナタ ニ短調 K.32
●ヘンデル/ケンプ編曲:組曲 第1番 HWV434より第4曲「メヌエット」ト短調
● J.S.バッハ/ ヘス編曲:コラール「主よ、人の望みの喜びよ」BWV147
● ヘンデル:シャコンヌ ト短調 HWV435
intermission
● シューベルト:ピアノソナタ 第18番 ト長調 D.894
第1楽章 モルト・モデラート・エ・カンタービレ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 メヌエット:アレグロ・モデラート
第4楽章 アレグレット
encore
● サティ:グノシエンヌ 第1番
コンサートを楽しんで聴くために
パンフレットにも記載されていましたが、会場に入る前に「前半のプログラムは拍手なしでお聴きください」と係りの女性がメッセいーじカードを持っていました。後半はシューベルトのソナタなので、そちらも同じだと思いました。
●コンサートはすべてのお客と演奏者にとって共有の空間です。演奏後の早すぎる拍手が他の方の感動を損ねることがあります。ホールに響く余韻までお楽しみください。
●のど飴の包み紙の音、プログラムをめくる音、ビニール袋などのガサガサ音はとても響きます。
●リズムに合わせた大きな動作、前に身をのりだしてのご鑑賞は後ろの席のお客様の視界をさえぎることもありますので、ご配慮をお願いします。
具体的な注意事項が記載されていて驚きました。
厳かな響きに包まれる
いよいよ緑のドレスを着たケフレックさんが登場しました。モデルさんのようにスリムで美しいピアニストだなと思いました。前半のプログラムはバッハを中心としたバロック音楽。有名な曲はヘス編のコラール「主よ、人の望みの喜びよ」です。多くのピアニストがヘス編をコンサートで演奏しますよね。スコアを持っていますが、難しくてなかなか仕上がりません。
76歳のケフレックさんですが、全く無駄な動作がなく、軽やかなトリルがとても美しく繊細。すぐに惹き込まれました。そして、重厚なフォルテにハッとさせられます。歳を重ねてもピアノの指導と共にずっと弾いていきたいので、とても勉強になりました。
常に死が隣り合わせのシューベルトの儚さ
シューベルトの音楽というと、常に死が隣り合わせの儚さが漂っています。ベートーヴェンを尊敬し、一世代もあとに生まれたのに、ベートーヴェンが亡くなったのと同じ頃に後を追うように亡くなりました。31歳という若さで梅毒でした。
シューベルトの曲の特徴は、とにかく長い作品が多いことだと思いますが、ピアノソナタも第16番以降は一貫して第4楽章制。16番では同音連打やシンコペーションが効果的に使われた作品で、弱音からフォルティッシモまで音の幅がありました。ト長調なのに、すぐに暗い響きを伴っていました。常に死が隣り合わせで、明るさの中に死の不安を感じさせられました。
前半と後半を一気に演奏するスタイルで、とても集中力と体力が要るのだと感じます。大きな拍手が鳴りやみませんでしたが、もしかしたらアンコールは無いかもと思っていました。しかし、サティのグノシエンヌ第1番を、情感たっぷりに揺れながら演奏される姿に会場の皆さんが釘付けになって聴き入りました。そして、演奏が終わると、ピアノに向かって拍手され、ピアノの蓋をパタンと閉めて「もう、おしまいよ」と会場に合図する姿が、とてもチャーミングでした。
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