場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
指揮・構成・編曲:南 安雄
出演:札幌交響楽団、イヴ・ラファルグ(オルガン)、杉木
峯夫(トランペット)、宍戸 悟郎(合唱指揮)
札幌大谷フラウエンコール、札幌大谷短期大学輪声会
今年最後のコンサートはキタラでのクリスマスコンサートとなりました。パティオの大きなツリーを見ると、なんだかワクワクした気持ちになります。何歳になっても、クリスマスは楽しい気分になるものですね!プログラムはオーケストラのクリスマス・フェスティバルから始まりました。愉快なクリスマス・ソングに乗って、鈴などの可愛らしい音色に心も弾んでいくようでした。パイプオルガンとトランペットの「アヴェ・マリア」、ドビュッシーの合唱曲「もう家もない子のクリスマス」など多彩な演出で面白かったです。ドビュッシーに合唱曲があったのですね。ピアノの前奏を聴いていると、あぁ確かにドビュッシーだなと思いました。最後は会場の中に柔らかな光の雪が舞い降りる中、「きよしこの夜」を大合唱で一足早いクリスマスの夜を楽しみました。
1999/11/27 Sat.
場所:余市中央公民館
ピアノ:アンドレイ・ピサレフ
余市にはコンサートに適したホールが無く、公民館も四角いホール・ギシギシのパイプイス・古いピアノと、私たちの発表会
Little Playersでもマイクを使わざるおえない状況でいます。 そんなホールで一流のピアニストのコンサートがあるというので、いったいどのようなことになるのかと、心配しつつも、自宅から歩いて行けるところでコンサートが聴けるという事に感謝して聴いてきました。
ピサレフさんの演奏を聴くのは初めてですが、余市の前の札幌のコンサートは大盛況だったという話を聞いていましたので、楽しみでした。会場はほぼ満席、近所の人の集まりみたいだし、小さな子供達も多く、始まる前は大井戸端会議状態! どうなることやらと、思っていましたが、さすがプロの演奏ですね、始まった途端(予想より^^;)静かになってしまいました。音響はホールの響きが期待できない事がわかっていたので、2列目に座ったおかげで直接ピアノの音を聴く事ができました。案の定後ろからの反響音はほとんどありませんでしたが、札幌から運ばれてきたピアノとプロの力強いタッチで、良い印象を持ちました。
ピサレフさんの演奏は、ロシアの方の特徴なのでしょうか、透明感あふれる高音、美しくコロコロと心地よいトリルと野太く力強い低音部とが見事に調和していました。ラフマニノフの曲などを聴くと時々同じ様な印象を持つことがあります。やはり北の地方独特の感性として相通じるものがあって、それが北海道で生まれ育った私の心を打つものがあるのかもしれません。
柔らかな肘や手首の動きと、全身のバネを感じさせる切れの良いスタッカートも素晴らしかったです。
プログラムはスカルラッティのソナタから3曲、非常に丁寧で端正な演奏でした。次はショパン。ショパンは個性的な演奏だなと思いました。メロディーは流麗で伴奏は特に低音が力強く、リズムが出ていてロシア風ショパン?という感じでした。私は、甘美でセンチになりがちなショパンは嫌いですがピサレフさんの演奏は好感が持てました。中でも「子守歌」は素晴らしかったです。
息づかいまで聞こえる席だったこともあり、一音一音大切に語りかけるように、暖かく柔らかな音色にうっとりとさせられました。
最後はリストです。「ハンガリー狂詩曲」の後、演奏された「孤独の中の祝福」という曲は、演奏会ではまず取り上げられることもなく
CDもほとんど無いということで、私も初めて聴きました。
リストの曲というと派手で技巧的な作品が多いですが、この作品は繊細で美しい曲でした。 プログラムの最後はいかにもリストらしい超人的なテクニックを必要とする「メフィストワルツ」でした。華やかな演奏は演奏会の最後を飾るにふさわしい見事な演奏でした。会場の問題や無駄に長くたどたどしいMCなど運営上の問題もありましたが、結果としてとても良い演奏会でした。まさに弘法筆を選ばず、ピアニスト会場を選ばずといったところですね。(^o^) しかし、あぁ、いつになったら余市に音楽専用のホールができるのだろう・・・。
1999/11/25 Thu.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
ピアノ:舘野 泉
語 り:岸田今日子
女優の岸田今日子さんとピアニストの舘野 泉さん競演という素晴らしい企画は、いったいどんなコンサートになるのだろうと、以前から大変楽しみにしていました。 運良く前の方の席で、これからの2時間に期待をしていると、舞台の袖からすーっと岸田今日子さんが登場、登場しただけだというのにさすがに存在感があります。そのままプログラムの第一番であるサティの「スポーツと気晴らし」の前口上。その後舘野先生が登場し、ピアノと語りのアンサンブルの世界へと誘い込まれたのでした。「スポーツと気晴らし」は、いきなり「食欲をそそらないコラール」というタイトルで始まる事でもわかるように、いかにも機知とユーモアに富んだサティの作品です。
20曲の小品からなる組曲は語りとピアノ演奏がほぼ重なって進んでいき、なんだか日常の会話を聞いているような面白さがありました。
続いてフィンランドのノルドグレンが小泉八雲の「怪談」にインスピレーションを得て作曲した「怪談による連作バラード集」より。「ろくろ首」のピアノソロ演奏後、物語を一部始終聞いてからピアノ演奏というスタイルの「雪女」と「耳なし芳一」でした。岸田さん独特の語りの効果は抜群で「怪談」はドロドロとした恐ろしさがありました。舘野先生もいきなり立ち上がって、鍵盤を押さえながらギターのピックを使って直接ピアノの弦を鳴らしたり、いつものコンサートとは違った独特の演奏をされていました。音数が大変多く、悲鳴のような凄まじい音が鳴ったりなど斬新な曲です。後半はナザレーの小品2曲をピアノ独奏の後、プーランクの「ぞうのパバール」でした。子象ババールの成長と冒険が可愛らしく微笑ましかったです。今年の3月にサロンコンサートでも聴きましたが、岸田今日子さんによる素晴らしい語りと相まって一層ステキな音楽物語でした。
LittlePlayersでも、ピアノ組曲という形で、ナレーションを入れたピアノ演奏をプログラムに取り入れて好評を得ていますが、このようなコンサートを聴くのは初めてでした。
それは今までの”コンサート”というものの枠に収まらない”空間芸術”とも言えるものだと思います。 舞台装置などは一切無いのに、クライマックスの祝宴の後の夜、象の王様となったパバールが森の中で妻と幸せをかみしめるシーンでは、舞台裏客席の足下を照らすランプが星に見え、まるでその場に居るような錯覚さえ覚えたのでした。
1999/10/28 Thu.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)小ホール
ピアノ:及川浩治
及川浩治さんは昨年PMF’98に出演され、佐渡 裕さんの指揮で、ベートーヴェンピアノ協奏曲「皇帝」を演奏されました。この時はキタラ大ホールと芸術の森の野外コンサートで2度聴くことが出来ましたが大変素晴らしいコンビネーションで、私にとって昨年度の演奏会の中でNo.1に輝きました。ソロリサイタルを聴くのは今回で2度目です。初めて聴いたのは、もう7年位前だったと思いますが、今でもはっきりと覚えています。スマートで小柄な方ですが演奏は大変ダイナミックで、ベートーヴェンの「熱情」をもの凄い迫力・低い唸り声で熱演されました。端正な顔立ちからは想像もつかない、少々荒々しい演奏には驚きました。さて、今年はショパン没後150周年ということで、たくさんの演奏を聴いてきましたが、今回の及川さんの試みはご自身でナレーションを入れながら、ショパンの生涯における数々のエピソードを追ってという「ショパンの旅」でした。プログラムの最初が「ノクターン
遺作 嬰ハ短調」でしたが、アンコールなどで弾かれることの方が多い曲です。メロディーラインが一瞬、えっ?と思うくらい強いのでびっくりしてしました。デリケートな小品には少しピアノの音がきらびやか過ぎるように私には思えましたが、「革命」「英雄ポロネーズ」「バラード第1番」などは最高の響きで、身体全体のバネを使った素晴らしい演奏に目を奪われました。全体を通してアップテンポ気味で、あまり甘美になり過ぎず、ショパンの気品のある香りが漂う演奏に酔いしれました。激しい曲の後でも息が乱れることなくお話されるのには、日頃から鍛えていらっしゃるのだろうなぁと思いました。アンコールの2曲目「スケルツォ第2番」は、これだけの熱演の後にもかかわらず、水を得た魚のように溌剌として音に輝きと切れがあり、気迫みなぎる唸り声も絶好調といった感じで、聴衆は皆、身を乗り出して聴き入っていました。まさに圧巻の演奏に「凄い!」と口々に絶賛の声が上がっていました。晩秋の寒さを忘れるホットなショパンの調べでした。
1999/10/23 Sat.
場所:札幌芸術の森アートホール
出演:舘野 泉(音楽監督・ピアノ)、エレン・ビョルネビー(フルート)他
ピアニストの舘野 泉先生が音楽監督を勤めるこのコンサートは、北欧5カ国の豊かな芸術・文化を紹介し、北の風土・特性が似ている札幌との交流を図ることを目的として、1991から毎年開催されています。私も毎年聴きに行っています。今年は「ノルウェー」がテーマでした。ノルウェーといったらグリーグですよね。プログラムの前半はフランスの作曲家
P.ガバイエという方の作品でフルートとファゴットの掛け合いが大変面白かった「ソナチネ」、続いて武満
徹さんが亡くなった年に書かれた作品なのだそうですけど、「エア」とうフルートのソロでした。ビョルネビーさんの演奏は繊細で女性らしく柔らかな音色が心地良く、聴いているうちに幻想の世界をさまよっているようでした。プログラムの後半はグリーグで、ピアノ連弾曲で有名な「ノルウェー舞曲
Op.35」を、私の母校である札幌大谷短大音楽科の谷本聡子先生と太田
恵先生によるリズミカルで迫力のある演奏はオーケストラ的な厚みがあり楽しかったです。最後に舘野先生の演奏で「ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード」という大作でしたが、初めて聴きました。グリーグの作品は土臭く骨太で、北欧の澄んだ空気が感じられます。4年程前だったでしょうか、私がグリーグのピアノソナタを弾く直前に、このコンサートで先生に「気を付けないと骨だけの演奏になりがちだからこわいよ」とおっしゃて頂いた事を思い出しながら、聴いていました。いつもそうなのですけど、先生の音色は暖かで優雅で懐かしく、「ああ、この音だ、この音の元に帰ってきた」そんな感じを受けるのです。激しいパッセージではバネのように、でも軽々と柔らかで流麗そのものなのです。来年は10周年を迎えるので大きな企画を立てていらっしゃるとかで、今から楽しみです。
1999/10/22 Fri.
場所:京王プラザホテル札幌
講師:ピアニスト 有森 博
有森 博さんの演奏を初めて聴いたのは、第12回ショパンコンクールで「英雄ポロネーズ」などを演奏して最優秀賞を受賞された時のTV放送でした。聴衆を沸かせた、のびのびとした魅力のある演奏は、今でも記憶に新しいです。初めてのコンサートでは、熱演後にハァハァいいながら「何か、質問は?」なんて唐突におっしゃるので可笑しくて、そう、雰囲気が面白いのですよね!最近はヤマハのレクチャーコンサートなど、今回のようにミニコンサートと合わせての企画も多いので、演奏を聴ける回数が増えてうれしく思います。さて、ミニコンサートとなっていましたけど、内容の濃いコンサートでした。ショパンの小品ではピアノが優しく歌い、バッハ/プゾーニ編曲の「オルガンのためのプレリュードとフーガ」では、パイプオルガンのような厚みがある迫力で、最後のラフマニノフの「音の絵」では、美しさと激しさが交差して聴きごたえありました。汗だくになっての演奏に、最前列に座っていた私は思わずハンカチを差し出したくなる程でした。
第2部の公開レッスンの方ですが、どのようなレッスン展開になるのか、とっても興味がありました。小4の男の子がショパンの「ワルツOp.64No.2」を演奏しました。達者に弾いていましたけど、痛みだとか悲しみなど心の中から湧き出てくるものを、この歳のお子さんにレッスンするのは大変です。有森先生も言葉では伝えにくいので、ご自身が弾いてというアドバイスをなさっていました。この曲で私自身が難しいと感じるのは、同じパッセージを同じように弾かないという、当たり前のことですが、このニュアンスをどう表現できるかという点です。ニュアンスを出すためのペダルも凄く難しいと思っています。続いて、大人の生徒さんがラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」第一番を演奏しました。洒落た響きのステキな曲で演奏もチャーミングでした。今度は大人の生徒さんということで、だいぶリラックスされてのレッスン展開でした。有森先生はこの曲にちょっと興味を抱かれたのでしょうか、「弾けないですが」とおっしゃりながら、素晴らしい音色を会場一杯に響かせました。これがピアニストの音なのですね。凄かったです! 今回も大変勉強になり満足しました。
1999/08/01 Sun.
場所:札幌芸術の森・野外ステージ
指揮:佐渡 裕/ジョナサン・シェファー他
出演:PMFオーケストラ/札幌交響楽団他
開放的な野外で終日行われるPMF演奏会の集大成ともいえるお祭りコンサートです。芝生の上にランチをひろげてピクニック気分で楽しめる、このコンサートも今年で10回目を迎え、札幌の夏の風物詩となり、確実に成長していると実感しています。PMFの参加メンバーが次々と登場して夕暮れのフィナーレに向かって熱く盛り上がっていく様子はいつも鳥肌が立つ程、感動してしまいます。昨年までの芸術監督だった、指揮者でありピアニストでもあるクリストフ・エッシェンバッハの参加が、今年からしばらく無いので寂しかったですが、バーンスタインの愛弟子、佐渡
裕さん指揮のフィナーレは最高でした。大きな身体を生かしたダイナミックな指揮は、音楽って本当に面白い!と、いつも観客を夢中にしてくれます。今回はPMFオーケストラの指揮でしたが、特にラヴェルが良かったです。響きが大変柔らかで美しく、野外でも、それも降りしきる雨の中で、装飾音など1音1音がはっきりと美しく聞こえるのには、驚きました。なんだか、そういった環境までも味方にしてしまうのかとさえ思えました。曲目は「高雅で感傷的なワルツ」、「ダフニスとクロエ
第2組曲」、そしてアンコールは「ボレロ」でした。
この日は終日 雨でしたが大勢の観客が最後まで熱心に音楽を聴き入っていました。また、野外のコンサートであってもマナーが良く、心から音楽を楽しみ、このPMFのコンサートを暖かく見守っているという感じでした。最後に花火が上がった時は子供のように喜んでしまいました。
1999/07/24-25/Sat-Sun.
場所:倶知安町 くどさんパーク特設野外ステージ
出演:椎名 豊/小野リサ/アーチシェップ/国府
弘子他
毎年聴きに行きたいと思っていましたが、PMFと重なったりで今回初めて聴くことができました。なんと、今年で10回目にもなるということでPMFと同じなのですね!プロと同じステージにアマチュア・バンドやモントレー・ジャズ・フェスティバルのハイスクール・ビッグバンドが入っていて、大変レヴェルが高く、内容も充実していて二日間存分に楽しめました。お目当ては小野
リサさんと国府 弘子さんでしたが、ライブで聴くのは初めてでした。小野
リサさんはチャーミングな方で、囁きかけるような優しい歌声に誰もがうっとり!夏にぴったりなボサノバは山の中の爽やかな空気とマッチしていて心地よかったです。朝まで歌ってなんて声が上がっていました。国府
弘子さんはきりっとした美人で、お祭りの雰囲気が合うエネルギッシュな方でした。私のHPで彼女のオリジナル曲を取り入れていることもあり、ライブを大変楽しみにしていましたが、CDより何倍も良かったです。とってもスリムなのにダイナミックなピアノで、見ていても聴いていてもスカッとして気分爽快。バンドの方たちも超一流だからなおさらです。特にパーカッションの斉藤ノブさんは最高でした。こんな贅沢なコンサートはなかなか無いと思いますよ。倶知安町に、こんなに一流プレーヤーが集まって、素晴らしい演奏を披露してくださることに本当に感激しました。屋外でのコンサートですので、食事をしたりお酒を飲んだりしてくつろいで楽しめるのがまたいいですね。
1999/07/23 Fri.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
指揮:高関 健
ピアノ:小山 実稚恵
PMFの演奏会部門の一環として今回が初参加となったN響の演奏会でした。
プログラムはショパンのピアノ協奏曲 第2番
ヘ短調 作品21とシューベルトの交響曲 第8番
ハ長調 「ザ・グレート」 D.944でした。
さて、「第2番」と呼ばれているショパンのピアノ協奏曲ですが、実際には最初に書かれました。この曲を作曲して半年後に、「第一番」が書かれ、後で書かれた協奏曲の方が先に出版されたため順序が逆になったのだそうです。小山
実稚恵さんの演奏で「第1番」をもう10年以上も前に聴いていますが、今回の演奏には円熟味が増して、ショパンの甘美な世界を十分に堪能させていただきました。冒頭のオーケストラからピアノの冒頭まで随分長いのですが、小山さんは目を閉じてオーケストラと呼吸を合わせて、曲にとけ込んでいく様子が伝わってきました。そして、いよいよピアノの登場!目を閉じたまま羽のように腕を広げて、鳴らされた音に「ああ、なんていい音なのだろう!」と感動してしまいました。特に第2楽章の詩情豊かで甘美なメロディーを聴いていると天にも上る気持ちになりました。真夏に爽やかなショパンの音色は、少々バテ気味の身体に活力を与えてくれたようです。今度は小山さんのソロのコンサートも聴いてみたいです。
シューベルトの「ザ・グレート」は初めて聴きました。この曲はシューマンによって発見されたのだそうです。「天国的な長さ」に関心をかき立てられたということですが、私のシューベルトのイメージが正にこれなのです。それ故、あまり好きになれないのかも知れません...。「ザ・グレート」の標題通り、堂々とした曲でした。しかしながら、やはり長く感じてしまうのは、もう少し興奮したいという思いが私の中にあるからだと思うのです。全体を通してシューベルトの歌を感じ取ることはできました。
高関 健さんの指揮で演奏会を聴くのは2度目でした。小柄な方ですが、スケールが大きくて小気味良い指揮ぶりは、見ていて大変勉強になり楽しかったです。
1999/07/11 Sun.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
ピアノ:ジャン=イヴ・ティボーデ
1997のPMFで好評だったティボーデですが、リサイタルを聴くのは今回で3度目になります。プログラムは得意のラヴェルとショパンということで楽しみにしていました。相変わらずのハンサムで、スラッとしていて、お洒落で、見ているだけでもうっとりとしてしまいますが、演奏はもっと凄い!どんな難曲でも、さらっと軽く弾きこなしてしまい「魔法の手」のような動きに、ただただ驚かされます。前半はラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」と「鏡」でした。同音連打、トリルやグリッサンドのなんと綺麗なこと!とても軽やかで、切れがあり、これぞ「印象派の音楽」という感じで素晴らしかったです。1997では同じ印象派のドビュッシーのプレリュードを、やはり素晴らしい演奏で聴いたことを思い出しました。比較すると、ラヴェルはドビュッシーよりもクールな音楽だと感じます。後半のショパンは、多分聴衆の誰もがびっくりし、眠たい人などは居なかったのではないでしょうか。舟歌、3曲のエチュード、3曲のワルツ、スケルツォ
第2番を立て続けに演奏されました。(「舟歌」は、先日のラローチャの演奏より淡泊な感じではありましたしたが)途中、何度も拍手したかったです。やはり会場の皆さんも同じ気持ちでワルツ
第1番の後に拍手があがりました。私は、「革命のエチュード」に度肝を抜かれました。凄まじい速さでありながら、1音1音が大変クリアーで、強弱も自由自在!一度でいいからあんな風に演奏してみたいものです。ピアニストって、素晴らしいですね。熱烈な拍手に応えてくれたアンコールは、なんとジャズのデューク・エリントンの作品から「ジョブリー
ストンプ」と「プレリュード トゥ ア キス」でした。またまたびっくりしてしまいました。本当に楽しませてくれます。最後はシューマンの「アラベスク」でした。こんな演奏会が聴けたら、ますますピアノが好きになってしまいます。
1999/07/10 Sat.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
笙: 宮田 まゆみ
ピアノ:ジャン=イヴ・ティボーデ
音楽教育を中心とした国際的な音楽祭として、今年、10回目を迎えるパシフィック・ミュージック・フェスティバル、PMF。10周年を記念して、延べ1,200人を数える過去9回のPMFアカデミー修了生の中からプロフェッショナルのオーケストラ団員として世界中で活躍するメンバーを100人で編成されたオーケストラということでした。さすがに聴きごたえ十分で、1999のオープングコンサートを飾るにふさわしい華やかなコンサートでした。プログラムの最初は1994のレジデント作曲家をつとめた故武満 徹さんのセレモニアル−An
Autumn Ode−のオーケストラ作品で東洋の伝統楽器「笙(しょう)」を初めて聴くことができました。何とも言えない不思議な響きに包まれ、まるで天国から武満さんを招いているような幻想的な音楽でした。続いてバーンスタイン30歳の作品、交響曲
第2番「不安の時代」は、ソロ・ピアノにかなり大きな比重が与えられていて、更にアップライトピアノの演奏もあって、面白い作品だなぁと思いました。突然、木魚が鳴った時には驚いてしまいました!最後に、マーラーの交響曲
第1番「巨人」でしたが、コンサートで聴いてみたいと思っていた曲でした。カッコウがさえずる朝の情景を思わせるのどかな音楽から始まりました。舞台の袖でトランペットが鳴っているという演出にも驚かされました。私は、特に第3楽章が気に入ったのですが、どこか懐かしく素朴で、聴きながら色々な事を回想していました。そしてフェルマータ休止を挟んでそのまま続くフィナーレ「嵐のように激しく」は、もの凄い迫力で会場全体が熱気に包まれてしまいました。演奏時間も45分という雄大な曲でした。
1999/06/10 Thu.
場所:サントリーホール
ピアノ:アンドレ・ワッツ
ワッツとの出会いは、中学の時のピアノの先生に、リストの「ラ・カンパネラ」をレコードで聴かせていただいた時ですが、とてつもない大きな衝撃を受けました。
コンサートは高3の時に初めて聴きに行き、それ以来チャンスがあるたびに出かけています。当時習っていた音大の先生にはワッツはすこぶる不評でした。たまたまレッスンとコンサートが重なってしまい、先生に「どうしても行くの?」と言われ、「はい」と答えたことは今でも忘れることができません。ワッツの魅力はなんといっても「人間ワザではない!」と叫んでしまう程のバネです。グローブのような大きな手で華麗にピアノを弾いている姿は「リストの生まれ変わりなのでは?」とさえ思えるほどです。
さて、今回のプログラムは前半がベートーヴェンなどの古典の音楽、後半はショパンでした。以前に聴いた迫力の「熱情」を今回もまた!と期待したのですが、特に弱い音が鳴りきらなくて、終始ピアノと戦っているかのような感じでした。ホールの音響とピアノのイメージが合わなかったのかも知れません。案の定、休憩に入るとすぐに調律師さんが出てきました。後半のショパンのバラード第1番の演奏は素晴らしかったです。バラードは物語風の音楽ですが、説得力のある演奏で、時には優しく時には激しく情熱的に語られました。特に”Presto
con fuoco”は圧巻でした。ワッツならではの瞬発力でまさに”火のような”演奏に会場からも大拍手!初めてスカッとしました。
今度はいつになるかわかりませんが、ワッツのリストを聴きたいです。
1999/06/06 Sun.
場所:鎌倉芸術館 大ホール
ピアノ:アリシア・デ・ラローチャ
今年76歳になるラローチャですが、ハイヒールを履きブルーのドレスで颯爽とステージに現れ、全く年齢を感じさせない落ち着いた深みのある演奏を聴くことができました。
CDでグラナドスの「ゴイェスカス」を聴いてからラローチャの大ファンになりました。コンサートは’95 ’97に続き3度目です。
プログラムは前半がショパン、後半がスペインものでした。ショパンの「ノクターン第9番」ではピアノに語りかけるように歌い、「子守歌」は涙が出る程の美しいピアニッシモに包まれました。「舟歌」では冒頭の音が一番印象に残っていますが、深い情景と孤独を感じました。「幻想ポロネーズ」はショパンの祖国ポーランドのリズムにもとづいて、ノスタルジーであり、憧れと悲しみのドラマが展開されていきました。前半のショパンの聴きごたえのあったこと!しかも、なんて楽に弾くのでしょう!後半のスペインの部に入ると一転してリズミカルな動きで、スペイン音楽特有の細かい3連符のリズムを軽やかに躍っているような演奏に釘付けになりました。アンコールは私のHPの日記のページ(美笛の湖の朝の情景)でも取り上げているモンポウの「秘密」でした。ラローチャによる「秘密」はホロヴィッツが「トロイメライ」を弾くような貴重なものだと私は思います。生演奏を聴けたことに大感謝でした。今回のリサイタルはホールの音響が素晴らしかったこともあり、ラローチャの音楽を堪能できました。これからも、お元気でコンサート活動を続けてくださることをお祈りしたいと思います。
1999/06/01 Tue.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
出演: ジョン・ルイス / デューク・ジョーダン
/ ジュニア・マンス / レイ・ブライアント /
ケニー・バロン / ジェシカ・ウィリアムス /
サイラス・チェスナット / ベニー・グリーン
/ ブラッド・メルドー / エリック・リード
最近ジャズコンサートづいているのか、5月の綾戸智絵さんに続きまたもやジャズコンサートです。
しかも今回は10人の豪華メンバーによるピアノコンサートでしたので、どんな風になるのかと楽しみにしていました。
新聞の「またもやニューヨークからジャズ・ピアニストが消える!!ジャズ・ピアノ界最強の10人ここに集結!」というコピーに目を奪われて、日付を見たらなんと私の誕生日! 思わずチケットを買ってしまいました。個性豊かなプレイヤー10人の演奏は、さすがに聴きごたえ十分、いいえ十二分です。ステージにはグランドピアノを二台向き合わせて、ソロ・2台・連弾・ドラムとベースとのトリオなど次から次へと名曲、名演奏のオンパレードです。ノリの良い曲有り、しっとりと聴かせるバラードありの素晴らしいプログラムでした。紅一点のジェシカ・ウィリアムスさんは背の高いブロンドの美人で、ピアノの弦をギターのように鳴らして、まるでピアノとギターのアンサンブルを聴いているようです。ブラッド・メルローさん(ワインの銘柄みたい)の演奏した”When
I Fall In Love"は、私のページの "Love
Sounds"でも取り上げている曲ですが、美しい音色で情緒たっぷりの演奏はとっても素敵。今回の一番はこの演奏です。最後は10人全員がステージに現れて、”Take
The A Train”のリレー演奏でした。 会場も一体となって手拍子をしたり、ステージでおどけてダンスをしたりと、楽しくて白熱した演奏に大満足でした。
1999/05/12 Wed.
場所:Zepp Sapporo
南博(p)
岡田勉(b)
江藤良人(d)
Love Soundsのコーナーで” Your Song ”を取り上げた時に、綾戸 智絵さんというジャズシンガーを知りました。初めてCDを聴いたときは、その日本人離れした歌声にびっくりしましたが、後日NHKの「トップランナー」という番組に出演された時にアメリカでの話を聞いて、なるほどなぁと思いました。その綾戸さんのコンサートが札幌であると聞き、さっそく予約したのですが、なんと、最前列中央という最高の席になりました。今回は残念ながら益田幹夫さんが来られなくなってしまったとの事で、南博さん(綾戸さんは実験用マウスのようと、おっしゃってましたが...)が代役でした。Jazz Liveは初めてでしたが、クラシックのコンサートと違い、会場の人もPlayerも!アルコールを飲みながらのフランクな感じで、曲の合間の綾戸さんのMC(歌っている間もMCみたい...)も面白く、とても楽しめました。歌はもちろん素晴らしくて、スローなナンバーでは聴き入ってしまいます。途中からアン(ル?)コールになって、ピアノの弾き語りになり、それもまた素敵でした。(はじめさんは、昔から好きな曲だった
Mr. Bojangles を歌ってもらえて喜んでいました。)そうそう、ちょっとしたハプニングがありました。コンサート中なんと、はじめさんが綾戸さんに呼ばれて喜んで握手してもらったのですが、「You stay
here」と言われて、なかなか手を離してくれなくて困っていました!
1999/03/22 Mon.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
指揮:小澤征爾
ソプラノ:ヒルデガルト・ベーレンス
メッゾ・ソプラノ:ジェーン・ヘンシェル
おなじみの飄々とした足取りで舞台に現れた、マエストロ小澤征爾。満員の大観衆が息を止めて見守る中、ほんのわずかな動きから、静かにその音楽が始まりました。まるで小澤征爾さんの呼吸がオーケストラを通じて表現されコンサートホール内を満たしていくように、暖かくそして自然な空気に包まれるのを感じました。今回のプログラムはリヒャルト・ワーグナー作曲の楽劇「神々のたそがれ」よりでした。これは通称「リング」と呼ばれる、「ニーベルングの指輪」という作品(4部作)のクライマックスです。物語の内容に関してはここでは書ききれませんので割愛しますが、4夜連続で上演されるこの壮大な楽劇の感動をそのクライマックスだけで表現してしまおうというこの試みは、小澤征爾さんという素晴らしい指揮者と、主役である歌手のベーレンスの歌声無くしては成し得なかった事なのかも知れません。
特に印象に残っているのは、やはりエンディングでした。熱くまた厚くうねるオーケストラの演奏を貫いてホールに響くたった一人の女性の歌声に圧倒されました。まさに壮大なスケールとドラマティックな楽劇にふさわしい感動的なエンディングと言えるでしょう。
1999/03/17 Wed.
場所:札幌パームホール
ピアノ:舘野 泉
賛助出演:東 園己(メゾソプラノ)
久しぶりの舘野先生のサロンコンサートでした。
サロンコンサートは、なんといっても身近で演奏を聴けることが魅力ですので、できる限り一番前に座ります。本当にすぐ横で演奏を聴けるなんて幸せです!
この日はモンポウの「内なる印象」、ショパンの小品3曲、クーラーの歌曲、ピアソラの3つの前奏曲というプログラムでした。いつもニコニコ顔で、穏やかな声でウィットに富んだお話しをしてくださるのが又ステキで、もうかれこれ10数年来、先生のサロンコンサートに出かけています。今年はフィンランドも大変雪が多くて、駐車場の車が雪につぶされてペシャンコになったのですって!
さて、コンサートの方は、いつものように曲の解説をお話してくださりながらの演奏で、ホールのべーゼンドルファーもとても響きが良かったです。初めて先生のピアソラを聴きました。激しく情熱的で、メランコリックな音楽にすっかり引き込まれていきました。演奏後、先生のお顔が真っ赤だったのがとても印象的でした。
1999/03/16 Tue.
場所:札幌コンサートホール(キタラ)大ホール
指揮:ハインリッヒ・シフ
ピアノ:仲道郁代
ピアニストの仲道郁代さんが出演されるということで出かけたコンサートでしたので、実はウィーン放送交響楽団のことも指揮者のシフさんについても知りませんでした。最初の”エグモント序曲”を聴いて、すぐに凄いということがわかりました。続いてピアノ協奏曲”皇帝”でした。いよいよ仲道さんが登場されるとステージがパッと華やかになりました。初めて聴く仲道さんのベートーヴェンでしたが、いつものことながら良くピアノが歌っていて大変心地よかったです。”皇帝”は華やかではありますが、とてもチャーミングでかわいらしいところもあり、その対比が好きです。第二楽章を聴いていると、エッ!?これが本当にベートーヴェンなのかしらって驚くくらいロマンティックなのです。98年からベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会に取り組んでいらしゃるとのことですが、さすがに素晴らしい演奏に会場からも拍手が鳴りやみませんでした。最後に名曲中の名曲”運命”でした。子供のころからベートーヴェンを弾くと(聴くと)何故か血が騒ぐ私ですが、私のベートーヴェンのイメージは黒と赤、ハ短調なのです。”運命”をこのオーケストラでシフさんの指揮で聴けたことは本当に幸運でした。気迫みなぎる圧巻の第一楽章、シフさんの身体からメラメラと炎が立ち上っているように見えました。充実した音で美しいハーモニーの第二楽章、強烈な主張、やり場のない攻撃的な思いを感じさせる第三楽章。真にベートーヴェンの魂にふれることができたという感じでした。でも、もっと感激することが・・・。アンコールの2曲目の時、シフさんがイスを持って現れたのです。いったい何が始まるのかと思ったら、楽団員からチェロを借りてバッハの”無伴奏チェロソナタ第一番”より「サラバンド」を演奏してくださいました。メニューイン追悼のための演奏とのことでしたが、言葉で表現しきれないほど素晴らしい演奏で会場全体がボーッとなり、拍手するまで”間”がありました。シフさんはチェロ奏者として第一人者だったのですね!本当に興奮したコンサートでした。
1999/03/03 Wed.
場所:札幌パークホテル
講師:ピアニスト 遠藤郁子
来年度のショパンコンクールの審査員となられたピア二ストの遠藤郁子さんによる、ピアノ指導者を対象としたセミナーでした。コンサートの時にも書きましたが、「日本人独自の動法によるピアノ演奏」を実際に身近で見ながら、お話を聴けるということで大変興味深かったです。指が速くまわらない時は呼吸の仕方を変えて、ゆっくり脱力しながら1音1音弾いてみるとか、レガート演奏の時は腰を縦に動かさず腰を伸ばすなど、手本を示しながらの説明になるほどと納得いたしました。数年前から「スオミ・ピアノ・スクール」で研究している呼吸と脱力が今回のセミナーで大きく取り上げられましたので、とても勉強になりました。ノクターンOp.9No1を演奏してくださいましたが、1音1音、大切に慈しむような演奏に会場から大きな ため息が漏れました。本当に、なんて綺麗な音!まさに「心底から出た音楽」でした。セミナーの後は豪華な昼食パーティとなり、素敵な企画に満足いたしました。
1999/02/28 Sun.
場所:ザ・ルーテルホール
はじめさんが、加羽沢美濃さんの”メモリー・オブ・1998”というCDを買ったところ、ミニコンサートのペアチケットを頂いたので聴きに行ってきました。加羽沢さんは芸大の作曲科を卒業して、現在はコンポーザ・ピアニストとして活躍されています。自由自在にアレンジをして素敵な演奏が出来ることがとてもうらやましく思いました。この日は”いい日旅立ち”など数曲を演奏してくださいました。福田進一さんは、エコール・ノルマル音楽院(パリ)を主席で卒業、その後内外の数多くのコンクールで輝かしい賞歴を重ねるギタリストです。最初の曲からいきなり、アルベニスのアストゥリアスで、インパクトのある演奏でした。北海道は湿度が低くギターが安定しないという事で、チューニングしながらの演奏でした。初めてギターのコンサートを聴きましたが、ギター一台とは思えない大きな演奏に感動しました。ピアノ曲をギターで弾く事に凝っているとかで、アンコールはサティのジムノペディの1番を弾いてくれました。近々オール・ショパンのアルバムを出すそうです。
1999/02/07 Sun.
場所:札幌コンサートホール(キタラ) 大ホール
今回初めてエル・バシャの演奏を聴きました。プログラムの前半はベートヴェンのピアノソナタ31番と32番、後半はショパンの作品でした。1月の遠藤郁子さんと同様に照明を落としての演奏でした。ベートヴェンの31番を聴いて、その彫りの深い音楽に感銘を受けました。
内面的深みを求める晩年のベートーヴェンの音楽ですが、とても叙情的で甘美な演奏でした。一般的には演奏の後、一度ステージの袖に戻るので、遅れてきたお客さんが会場に入ってきましたが、エル・バシャさんはステージの上で威風堂々としていて、お客さんが静まるのをじっと待っていました。そして
32番の冒頭の音を聴いて、素早く自分の世界に入っていくエル・バシャさんの集中力を凄いと思いました。後半のショパンでは最初に作品50のマズルカの演奏でしたが、何といっても音の美しさに
ため息が出ました。
1曲目が終わり聴衆が拍手をしかけたのですが、エル・バシャさんは続けて弾くタイプなのですね、立ち上がって挨拶するでもなく、すでに手が次の曲に準備されていて、拍手を受け入れてくれませんでした。結局、拍手が無いまま後半を弾ききっていきました。もちろん、すべての曲が終わった時には、大きな拍手があり、それに応えてくれましたが、一曲一曲の演奏が素晴らしかっただけに、なんとなく物足りなさを感じました。このあたり演奏家によってそれぞれポリシーがあるようですね。
1999/01/20 Wed.
場所:札幌コンサートホール(キタラ) 大ホール
着物を着てピアノを演奏するという独特のスタイルで有名な遠藤郁子さんですが、そのスタイルは決して奇をてらったものではなく、日本人として日本人の感性や動法でショパンを弾くという事の象徴なのでしょう。それまでの遠藤さんは着物ではなくドレスで演奏されていましたが、1990年の乳癌克服以来、現在のスタイルに変わったようです。癌克服の時のリハビリを通じて日本人にあったピアノの演奏法というものを習得されたということです。
今年はショパン没後150年という事もあり、今回のコンサートは、抜け殻になったショパンの死への道のり、最期の心境を辿るという意味もあり”まぼろしの中で”というタイトルがついています。”子守歌”は、赤ちゃんをあやすような優しい音色で、母の胸に抱かれているような安心した気分になりました。最期の”作品62の2つのノクターン”では、遠藤さんが、「もはや、この世の響きではない」とおっしゃっている意味が良く分かりました。それは、非常に幽玄的な音で、私自身の魂がどこか遠くに行っているような、そんな感じに包まれました。ショパンを聴いて、そんな風に感じたのは初めてです。今回のコンサートを聴いてみて、遠藤郁子さんが”癒しのピアニスト”と呼ばれている事が良く分かりました。
1998/11/21 Sat.
クリストフ・ポッペン指揮
場所:札幌コンサートホール(キタラ) 大ホール
私にとって室内楽は、何の気負いもなくゆったりと聴けるコンサートです。そういうわけで、毎年何回か、ふと聴きに行きたくなります。今回はプログラムが"セレナードの夕べ"という事や、リハーサル見学ができる事もあり、申し込みました。恥ずかしながらミュンヘン室内オーケストラに関してはほとんど知らないで行ったのですが、とてもレベルの高いオケであることは、リハーサルの第一音から感じ取る事ができました。(後でパンフレットによれば、ドイツを代表する名門オーケストラだという事です。)
指揮者のクリストフ・ポッペンさんはリハの時からサービス精神旺盛で、とても音楽や聴衆を愛しているという事が伝わって来て、大変好感の持てる方です。本来集中しての最後の詰めである本番前のリハに招待してくださった上に、トークも交えてくださり、演奏会への期待がますます高まりました。私はオケを聴くときは指揮者の正面の席(キタラではP席と言って、ステージの裏手になります)に座ることが多いのですが、今回もその席に座りました。そこでは、指揮者が演奏者に出す指示や表情や表現などを細やかに見る事ができるので、とても勉強になるのです。
どの曲の演奏もすばらしかったのですが、一番印象に残った曲をあえてあげるとすれば、最後に演奏したチャイコフスキーの弦楽セレナードハ長調作品48です。厚みがありインパクトのある曲の出だしに驚嘆しました。指揮者を入れて20名の息がぴったりと合っていて(それこそビブラートの一つひとつまで!)、正確なアンサンブル、そして透明感のある明るい音色が会場に満ちて、終始聴衆を魅了し続けました。数あるコンサートのなかでも大変印象に残るコンサートでした。
室内楽を聴きにくる人達がそうなのか、演奏があまりにもすばらしかったせいなのか、これほど一体感のあるコンサートというのも珍しい事です。
すっかりファンになってしまった私は、さっそくCDを買い、車で聴きながら帰りました。
1998/10/31 Sat.
出演:舘野 泉・Audur Hafsteindottir・Bryndis Halla Gylfadottir他
場所:札幌芸術の森アートホール
北欧五カ国(フィンランド・スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・アイスランド)と札幌市民の交流を深めるコンサートで、私の大好きなピアニストの舘野 泉さんが芸術監督を務めています。PMFと同様毎年聴きに行っています。今年はアイスランドのバイオリニストとチェリストの二人がみえてとても素敵な演奏を披露して下さいました。お二人ともとても魅力的な女性でした。それぞれ2児と3児の母親だなんてびっくりしました。北欧には実力のあるアーティストが沢山いらっしゃいますが、地理的な問題からなかなか知られる事が少ないので、このようなコンサートは大変有意義だと思います。チェロとピアノの二重奏では、アイスランドの作曲家ノルダルの”板壁の絵”が演奏されました。この曲は4つの小品からなっていて、北欧らしい響きと彼女の表情がとても印象的でした。チェロという楽器は演奏者の表情がとても良くわかる楽器だなぁと思います。最後に舘野先生の演奏で、フィンランドのクーラという作曲家の”おとぎ話”を聴かせて頂きました。こちらも北欧らしく、ひたむきな情熱に満ちた曲で、舘野先生の暖かくそしてダイナミックな演奏とあいまって紅葉の芸術の森にぴったりでした。
1998/10/30 Fri..
出演:有森 博・村上 輝久
場所:札幌 YAMAHA ホール
ピアニスト有森博さんと調律師の村上さんによる、ユニークなコンサートでした。グランドピアノとアップライトピアノの比較、例えば同音連打、音の強弱など普段の演奏会では聴けないような内容で大変為になりました。アップライトピアノを客席に向けると凄い音が出るものだなぁと驚きました。第三部の有森さんのミニコンサーとでは、お得意のラフマニノフ「音の絵」OP.39(全9曲)を中心に素晴らしい演奏が聴けました。ピアノに向かうと別人じゃないかしらと感じさせるような雰囲気をいつも感じます。前半でグランドピアノの特徴の講義を聞いていただけに、それを十分に生かしきったダイナミックでかつ繊細な演奏に感動もひとしおでした。