2002/ 12/ 10 Tue.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
アルトサックス&ソプラニーノ:渡辺貞夫
ベース&ヴォーカル:リチャード・ボナ
ピアノ&キーボード:ジョージ・ホイッティ−
ギター:ルイ・ウィンスバーグ
ドラムス:ナサニエル・タウンスレー
パーカッション:スティーブ・ソーントン
2002年最後のコンサートは渡辺貞夫さんのジャズコンサートなりました。渡辺貞夫さんの生演奏を聴くのは初めてです。というよりも、普段はクラシック系のコンサートがほとんどで、ジャズコンサートを聴く機会は少ない私ですから、結構楽しみなコンサートでした。
ステージもいつもの"キタラ大ホール"とは感じが全然違っていて、様変わりしたステージを見ているだけでウキウキした気分になりました。
渡辺貞夫さんは、もうすぐ70歳を迎えるそうですが、まったくそんな事を感じさせず、とにかくパワフル。ジャズの事をあまり良く知らない私でも、ノリとパワーと洒落っ気のあるフレーズの洪水で、すっかり良い気分です。クラシックコンサートですと、前半・後半の間に休憩を挟む事が多いので、時々休憩中にワインなど頂いたりします。
今日のコンサートは休憩は無しでしたが、音にすっかり酔わせていただきました。でも、椅子に大人しく座って聴くより、バーボン片手にカウンター席で聴いてみたいなんて事、実は考えていたりして...
ナベサダさんは、サックスだけでなく笛も吹くのですね。20年ぶりだとか。アフリカ、カメルーン出身のリチャード・ボナさんは、今注目されているミュージシャンだそうですが、澄んだ歌声に魅了されました。
ベースをまるでギターの様にソロで弾いての弾き語り、ファルセットを織り交ぜて伸びやかに歌い出すと、もうそこはアフリカになってしまいます。 国境を越えた音楽によるメッセージは胸が熱くなる程に強烈に伝わってきてジーンとなりました。
あっという間の2時間でしたが、もっと聴いていたい気持ちはみんな同じようで、アンコールの1曲目が終わっても拍手が鳴り止みません。「これ(1曲目)しか練習していなかったんです。」と言いつつ、最後にソロでアルトサックスを演奏してくださいました。
締めくくりにふさわしい、哀愁のある素晴らしい音に、ホールも心も満たされて、今宵のコンサートは幕となりました。
2002/ 11/ 28 Thu.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ギター:村治佳織
最近はCMでもお馴染みの若手女性ギタリストの村治佳織さんですが、最年少で数々のコンサートで優勝して輝かしいデビューを果たしています。 10歳の時に、福田進一さんに師事していたのですね。 それと、盲目の巨匠ロドリーゴを訪ね、目の前で演奏し、ロドリーゴ本人から絶賛の手紙が届いたのだそうです。 以前、聴いたパコ・デ・ルシアさんもロドリーゴの前で演奏されたそうです。 お二人とも「アランフェス協奏曲」をCD録音されていますが、どちらも説得力があり素敵です。
村治佳織さんのコンサートも、大ステージでギター1本の演奏というのも初めてでしたのでとても楽しみにしていました。 プログラムはリュート奏者バッチュラーの「ムッシュー・アルメイン」で始まりました。 明るくはずむ感じの軽やかな音楽の中にリュートの華やかな姿が再現されているようです。 この曲が終わって村治佳織さんがステージを退場した後で、突然、客席から「演奏中は、咳をするのをもっと我慢してください。 風邪をひいたのは自己責任なのだから!」と一喝するおじさまの鶴の一声で、確かに静かになりました。 長いことコンサートへ出かけていますが、初めてで、大変勇気のある方だなと感心してしまいました。 村治佳織さんも「ギターは、とっても繊細な楽器。 耳をそばだて、ひとつひとつの音を拾いに来てほしい。」と、おっしゃってますからね。 ちなみに演奏家が「うるさい、出ていけ!」といった場面にも1度遭遇しています。 1曲目はリュートの曲、2曲目はギターがまだ無かった時代のバッハの曲でしたが、次に演奏されたのは、名ギタリストでもあるキューバの作曲家ブローウェルの「黒いデカメロン」という曲です。 ギターの為に書かれた曲だけあって、ギターの響きや特徴が生かされていて、スピーディーでスリリング、そして官能的な素敵な曲でした。 後半は前半のシンプルな黒の衣装からかわって、情熱的で可愛らしい赤の衣装で登場。 マイクを持ってトークを交えながらの演奏です。 ハキハキと歯切れの良いトーンでスペインのレコーディングでのエピソードや、来年公開される映画音楽を担当された事などの話題を話す村治佳織さんは、とっても可愛らしくて好感が持てました。
ロドリーゴの曲は「アランフェス協奏曲」以外は知らなかったので、「遙かなるサラバンド」など数曲の演奏は新鮮でした。 盲目だった故の感性なのでしょうか、目を閉じて感じ取れる音の情景が音楽に見事に現れているようです。
心地良いゆったりとした世界に包まれるようでした。 2曲のアンコールがまた素敵でした。 美しいトレモロ、情感溢れるメロディーの「暁の鐘」は、うっとりさせられました。 CMでも流れている「タンゴ・イン・ア・スカイ」の情熱的なリズムに乗っての華々しい演奏は、聴く者の心まで熱くして大きな拍手に包まれました。
2002/ 10/ 18 Fri.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ピアノ:ダン・タイ・ソン
ダン・タイ・ソンのコンサートを聴いたのは4回目、2000年の春以来です。 その時のコンサートではラヴェルの「水の戯れ」を聴いて電撃ショック受けたかのような感動をしまして、なんとしても弾いてみたい!と思ったのでした。
その演奏が心に染みるピアニストとしては、私の中では一番なのかも知れません。 それほど、ダン・タイ・ソンの音には惹きつけられるものがあり、またあの音に包まれたくなってしまうのです。
2年ぶりの音はどう変化しているのだろうかと、興味津々です。 プログラムは武満
徹の『リタニ』というレクイエムで幕を開けました。 静かに音を空気中に散りばめられていくような演奏に武満音楽独特の幻想の世界へと誘われます。
続いてメンデルスゾーンの無言歌集より馴染みの数曲。 大ピアニストが可憐な小品を大切に弾いているということは素晴らしい事ですね。 美しい旋律が躍動的な伴奏に乗って心地よく歌われました。 そして、リストの『2つの伝説』。
第2曲の「海を渡るパオラの聖フランチェスコ」が私は好きです。 雄大な旋律、重厚なフォルテッシモを会場一杯に轟かせて、波の上を歩む姿が見えるようなスケールの大きな曲です。
弾いてみたいなと思っていた曲でしたが、とても無理だなと悟りました。 休憩を挟んで、ドビュッシーの前奏曲集第2巻、全12曲が一気に演奏されました。
印象派音楽の淡い色彩、揺らめくような音は、無言歌のような明瞭な旋律とは対照な音楽です。 ドビュッシーの最大傑作と言われるこの作品を、色々なピアニストの演奏で何度もコンサートで聴いていますが、実は途中で寝てしまうこともしばしばなのです。(^^;
それが眠るどころか、ムソルグスキーの「展覧会の絵」を彷彿させるような、そんなイメージを与えられて聴き入ってしまったのに正直驚いているところです。 最後の「花火」などは、次にグリッサンドがくるとわかっていても、ハッとさせられドキッとしてしまいました。 全く無駄のないフォルム、洗練された音、そして、ぐんぐん引き込まれる力強さ。ダン・タイソンの魅力が余すところなく発揮された演奏でした。
拍手、そしてアンコール....アンコールがまた素晴らしかったのです。 モンポウの洒落た音の後は、待ってましたのショパン。 「ショパン、ノクターン」とだけ伝えられ、いったい何番かしらとワクワクして聴き入ると、それは2年前のアンコールでも演奏された19番のホ短調でした。 あの時も、その美しく哀しい音に思わず涙が流れてしまったのですが、また同じでした。 深い深い音です。
隣りで聴いていた、ショパンは苦手の主人でさえも「この曲良いね」と言わせる程、いえ、おそらく聴衆の誰もが感動したに違いない素晴らしい音でした。 大歓声に応えて、次もショパンの「英雄ポロネーズ」です。 冒頭の音を聴いただけで、何という幸せ!状態になってしまった私ですが、圧倒的な演奏で体中が熱くなり興奮していました。 アンコールはドラマのように聴衆を興奮の坩堝に導いてしまったダン・タイ・ソン。 珠玉の演奏の数々で久しぶりのコンサートは、ピアノの素晴らしさを再認識させるものとなりました。ブラボー!!
2002/ 7/ 21 Sun.
場所:札幌芸術の森 野外ステージ
指揮:シャルル・デュトワ
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
管弦楽:札幌交響楽団/PMFオーケストラ 他
毎年お馴染みの楽しいナレーター橋本邦彦さんがステージに登場して野外コンサートが始まりました。今年のPMFレジデント・コンポーザー、ジョン・ココリアーノ氏のファンタスティックな作品「ハメルンの笛吹」は、たくさんのネズミに扮した可愛いバレエダンサーが踊りを披露してミュージカルのよう。4500人もの聴衆が入った野外席から突然、綺麗なフルートの音が・・・。さっきからカメラマンがこちらを撮っていると思っていたら、フルートのジェフリー・ケイナーさんを撮っていたのですね。街に出没する大勢のネズミは、この笛の音に弱いらしく、一匹残らず退散するのでした。札幌市内の中学生によるブラスバンドも入ったり、ステージと野外席を上手に使って楽しい演出でした。この後、様々なスタイルで音楽を楽しめました。プログラムの最後には昨日キタラで聴いたのと同じ曲が待ち受けていました。そう、音楽監督のデュトワ氏とピアニストのアルゲリッチの登場です!昨日のキタラでの演奏があまりにも素晴らしかったので期待が高まります。プロコフィエフの第3番ですが、始まって間もなく、アルゲリッチの妙なゼスチャーがデュトワ氏に何かを訴えているようでした。何だろうと思いましたが、第1楽章が終わってすぐに立ち上がり、しばらくデュトワ氏に話している様子からして、ピアノの音がご自身に返ってこないようです。第2楽章のオケの音が鳴り始めたら、頭をピアノに近づけていましたが、それは映画で見たワンシーンを彷彿させる感じでした。耳の聞こえないベートーヴェンがそんな仕草をしていました・・・。でも、さすがはアルゲリッチ。こうなったらって感じでグングンとオケの先を行きます。ちょっとオケが追いつかず、遅れ気味でしたが、かえってスリルを感じて良かったのかも知れません。その波に乗って第3楽章まで一気に弾きまくり、即座に椅子から立ち上がって大歓声の中に居らっしゃるのに、相変わらず、何なのこの音は!と少々怒り気味。そこがまたストレートなので人気があるのでしょうね。やっぱり抜群のピアノですし、聴いている側は満足でした。なだめ役のデュトワ氏は大変だったと思いますが。(^^;
最後の演奏、PMFオーケストラによる R・シュトラウスの『アルプス交響曲』の最後の「夜」の曲が静かに幕を閉じる頃は、野外のステージも真っ暗な森の闇に包まれていました。
2002/ 7/ 20 Sat.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
指揮:シャルル・デュトワ
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
管弦楽:PMFオーケストラ
世界中から注目されているアルゲリッチの出演とあって、PMF関係者も驚く未だかつてない即日完売となったコンサートです。指揮者のシャルル・デュトワ氏とは、アルゲリッチが16歳の頃から共演。結婚してお子さんもいらっしゃいますが、現在は離婚して音楽の大親友となったのだそうです。デュトワ氏はPMFの指揮者芸術監督、アルゲリッチは別府の音楽監督ですから、お二人とも、若手の音楽家の育成に力を入れていらっしゃるというのは素晴らしい事ですね。
先日もTVで別府音楽祭を見たばかりですが、この時もデュトワ氏と共演しラヴェルのピアノコンチェルトを華麗に演奏。
流石!と溜息をついていました。 さて、今日はどんな演奏が聴けるのかしらと待ちに待った演奏会です。
プログラムは、ラヴェルの『マ・メール・ロワ』から始まりました。 この曲は私も好きな曲の一つです。
原曲はピアノ連弾ですが、”オーケストラの魔術師”と言われているラヴェルによってオーケストラ用に書き改められ、一層しなやかな響きで洗練された音楽になったそうです。特に第3曲の「パコダの女王レドロネット」の華やぎが好きです。
そして2曲目『プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番』。 アルゲリッチの登場に会場も湧きます。情熱的なリズムに乗った切れの良い音。
スピード感のある心地の良い音。 ピアノの前のアルゲリッチは、まるで水を得た魚のように生き生きと躍動感に溢れていて、プロコフィエフ特有の強烈なリズムとモダンな和声が、アルゲリッチのピアノへの情熱と相まってズシンと迫ってくるようでした。
第2楽章の実に綺麗な音で歌われたかと思うと、夏の青空へと駆け上って行くような第3楽章の快活な音楽。 最もピアノを楽しめるところです。
難曲のはずのこの曲を、まったくそう感じさせず、しかもその音色やスピード感で聴くもの観るものを惹きつける演奏に、割れるような拍手の渦。
何度も何度もステージに登場、そして、驚いた事にアンコールを弾いてくれたのです!
ハンカチをポイッとピアノの中に投げたかと思うと「弾くわよ!」って感じで! 私は驚きと喜びで固まりながら聴き入っていましたが、ふと周りを見ると、他の人もハッと手を口に当てたそのままで聴き入ってました。
アンコール曲は、スカルラッティの『ソナタニ短調』。同音連打の速い曲です。 綺麗な音の粒が猛烈な速さで繰り出されます!
リピートも全部入れて一気に弾いてくださったのですが、会場全体がシーンとなり、その感動の音にひたすら酔いました。
ボルテージはますます上がり、拍手は鳴り止まず、とうとうコンサートマスターを連れて退場したアルゲリッチ。
数あるコンサートの中でも、こんな感動と興奮を味わうことは少なく、本当にラッキーでした。
休憩を挟んで、R・シュトラウスの『アルプス交響曲』が演奏されました。大編成のオーケストラを駆使した”アルプス絵巻”という感じのスケールの大きな曲でした。アルプス登山の一日がリアルな音によって描かれますので、様々なシーンを堪能できました。 内容の濃い演奏会でした。
2002/ 7/ 18 Thu.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ/アレクサンドル・グルニング/チェン・ウェンピン
ヴィオラ:今井信子
パーカッション:PMFアカデミー・メンバー 他
今年のPMFは、憧れのピアニスト、アルゲリッチが参加するという夢のような企画で、大いに湧いています。このコンサートは、アルゲリッチの演奏が聴ける第一夜です。
会場へ行くとプログラム変更の張り紙が目に入りました。まさか・・・!ドタキャンで有名なアルゲリッチですから、もしやと思い青くなって近づいて読むと、もうひとりのピアニスト、橋本京子さんが出られなくなったと書いてありました。えっ!と思いましたが、とりあえずは初めてアルゲリッチの音楽が聴けるのだとホッとしました。
今回は、後ろの方でゆったりと音楽を楽しみたいと思っていたので、ステージから離れた席で聴きました。プログラムの最初はバーバーの「木管五重奏のための夏の音楽」でした。タイトルに夏のとありますが、夕暮れ時の夏の公園を思わせるよう音楽でした。草木の甘い香りに誘われながらコンサート会場に赴く、そんな足取りを音楽にしたような幸せな音!木管の暖かで息の合った演奏は、とっても素敵なアンサンブルで、憩いのひとときを与えてくれました。そして、次にいよいよアルゲリッチが登場。バルトーク「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」でした。打楽器とのアンサンブルを考えての事なのでしょう、2台のピアノはいつものようにステージ上に向かい合わせに置かれるのではなく、客席にほぼ背中を向けるという配置でした。大きな拍手に迎えられて、ゆっくりとステージに登場したアルゲリッチ。子供の頃から、その情熱的で激しい音楽に魅了され、何度もレコードを聴いてきました。そんな憧れのピアニストに出会えた瞬間はゾクッとしますね。ティンパニーの低く弱い音で始まり、非常に緊張感のある出だしに思わずゴクッと咽が鳴ります。”打楽器のための”とタイトルにありますように、この曲はピアノも打楽器の一部のように感じました。プログラムノートには、多くの斬新さと発想の素晴らしさが盛り込まれた、バルトークならではの傑作とあったように、音楽も演奏もすばらしく、拍手が鳴り止みませんでした。ただ、残念だったのは、曲の性質もあり、また第2ピアノという事もあって、期待していたアルゲリッチの演奏が堪能できなかった事です。すばらしい演奏を聴かせていただいて贅沢かもしれませんが、今日のオーディエンスの中には私のようにアルゲリッチの演奏を楽しみに来ている方も多いはずですから、もうすこし選曲等に気を利かせて欲しかったなぁと思いました。 アルゲリッチの事ですから、ピアノソロは望めないにしても、せめてピアノは1台の曲にして欲しかったです。演奏会が終わって会場を出てくる人達もアルゲリッチの事は口に出さず、打楽器の演奏の素晴らしさを話題にしている人が多かったです。でも、土曜日はピアノコンチェルト。今度こそアルゲリッチのピアノを堪能できるはずです。
2002/ 7/ 13 Sat.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
指揮:シャルル・デュトワ
管弦楽:PMFオーケストラ
夏の楽しみになっている音楽祭PMF。今年で13回目を迎えました。凄いことです・・・
今日のプログラムは、ストラヴィンスキーの「火の鳥」とショスタコーヴィッチの交響曲第5番ニ短調。オーケストラが好きな人には、たまらないでしょうという内容ですね!
「火の鳥」は、「ペトルーシュカ」や「春の祭典」とともに、ストラヴィンスキーの”三大バレー音楽”といわれている作品で、彼の出世作となったものです。1910年、バレエ・リュッス(ロシア・バレエ団)によってパリで行われた初演は大成功を収めたそうですが、その革新的な手法は、当時の楽壇に一大センセーションを巻き起こしました。私はPMFの演奏会で、この3大バレエ音楽を全部聴きました。特に「春の祭典」の、あの破壊的な音楽を聴いた後ですと、「火の鳥」のタイトルからして激しい曲想をイメージしてしまいますが、色彩豊かで美しい曲でした。物語は、カスチュイの住む魔法の園に美しい火の鳥が現れ、
踊りを踊るところから始まります。そこへ、王子イワンが現れ、火の鳥を捕らえてしまう・・・。第2場まで全曲演奏となると、演奏する方も聴く側も大変な内容ですが、デュトワさんの愛情あふれる指揮と、それに応えてのPMFオーケストラのコンビネーションが素晴らしく、あっという間にクライマックスを迎えました。オーケストラのコンサートは指揮者の真向かいの席で聴くことが多いですが、目の前という事もあって、ついついパーカッションに目がいってしまいます、彼らのスリリングな演奏に触れると、こちらも手に汗して聴き入ってしまいます。後半はショスタコーヴィッチの通称『革命』。オーケストラにそれほど詳しくない私でも、この曲、交響曲5番はとても好きになりました。音作りがとっても素敵で、劇的な盛り上がりを見せたかと思うと、第3楽章の静かな静かなラルゴにうっとりさせられます。最高のピアニッシモを聴かせてくれました。間をおかず続く第4楽章はうってかわっていきなりすさまじい爆発で始まりました。それは第2次世界大戦前夜のうっとうしさを吹き飛ばすかのような、たくましい精神による勝利への道を暗示しているのだそうですが、戦争を知らない私には、うっとうしい蒸し暑さを吹き飛ばすような、爽快な音楽でした。
2002/ 7/ 4 Thu.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
指揮:秋山和慶
管弦楽: 札幌交響楽団
ゲスト:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団首席奏者
ギリシャ神話アポロンの楽器「キターラ」と「北」の意味が込められた"Kitara"という愛称が、すっかり定着してしまいましたが、その札幌コンサートホールKitaraが中島公園に誕生したのは1997年の夏でした。美しい公園の中のコンサートホールは、出かけるたびに癒され励まされ、数々の感動に出逢ってきました。私にとってとても大切な場所です。ホールが完成した時は、見学会に招待されホール探検ツアーみたいな貴重な体験をしました。ホールでは鉛筆1本が床に落ちても、響いてしまうのだと聞きました。それは「こけら落とし」の前のリハーサル・コンサートに招待された時に納得。オーケストラが奏でる音の美しかったこと!観客が座っている時の音響効果の測定の為に雑音(ホワイトノイズ)を聴くという実験台にもされました。 少しうるさかったですが、それもまた楽しかったです。
第1部は、14人のウィーン音楽家より愛を込めての祝賀演奏。7月6日から開催される札幌の夏の音楽祭「PMF」のゲストによる演奏でした。PMFの開会式などでよく演奏されるレハール作曲の「メリー・ウィドウ」のメドレーが演奏され、爽やかな初夏を運んできてくれたようでした。
世界最高峰の首席奏者のアンサンブルは、素晴らしいハーモニーでした。第2部は、こけら落としの時の指揮者、秋山和慶さんの指揮による札幌交響楽団のベートーヴェンの「第九」でした。一度は生で聴いてみたかったのですが、ようやく今日、聴くことができて嬉しかったです。ベートーヴェンにとって、シラーの頌歌「歓喜に寄す」に作曲することは生涯のテーマだったそうです。全4楽章で構成された大規模な「第九」は、各楽章に関連性があり、シラーの理念を曲全体で表現しているのだそうです。
第3楽章の演奏が始まる前に4人のソロの方がステージに登場。 ソロの皆さんは、以前PMFに参加された方々でした。そして、何と言っても圧巻だったのは、やはり第4楽章「歓喜の歌」。P席と呼ばれているオーケストラの後ろ側の席に合唱団の方々が並び、オーケストラのみの演奏の後、一呼吸置いてバリトンが入る個所などは、ベートーヴェンならではの緊張感と尊厳に満ちています。CDで聴いていても興奮を覚える部分ですが、コンサートであればなおさらです。
「第九」は、ベートーヴェンが理想としていた"平和"、"自由"、"博愛"といった人類の永遠のテーマを表現していますので、これからも人々に感動を与え続けていくのでしょうね。。フロイデ!
2002/ 5/26 Sun.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ヴァイリン:五嶋みどり
ピアノ:ロバート・マクドナルド
五嶋みどりさん、若くしてもう演奏家デビュー20周年になるのですね。現在の演奏活動は、ロバート・マクドナルドさんとのリサイタルとオーケストラとの共演が中心になっているのだそうです。1992年にご自身で創設された、子供達のための「みどり教育財団」の活動の様子はTVでも放映され、何度か見たことがあります。今回は、初めて生の音に触れることができました。札幌コンサートホール「キタラ」の大ホールが、ほぼ満席、始まる前から熱気に包まれていたのも五嶋みどりさんの人気と実力なのでしょうね。小柄な五嶋みどりさんと、大柄なマクドナルドさんの登場にそのボルテージはますます上がります。そして、次には静寂と緊張の空間に変わりました。私は、この瞬間のゾクゾクとする緊張感がたまらなく好きです。プログラムはリスト/オイストラノフ編/シューベルトのピアノ曲「ウィーンの夜会」の優雅な調べで始まりました。マクドナルドさんの、はぎれの良いピアノに乗って五嶋みどりさんは情感たっぷりに、そして、踊っているように演奏されました。曲目では、シマノフスキ/コハンスキ編の「いななけ、仔馬よ」が好きでした。静かに語るように歌われたその旋律は、悲しく美しかったのですが、馬を暗喩として失恋について語っているからなのですね。 繊細なヴァイオリンの音色にジーンときてしまいました。それから熱烈なファンのブラボーと拍手の嵐の後に演奏されたアンコールの1曲目。サラサーテの「序奏とタランテラ」。五嶋みどりさんがハキハキとした発音で曲名を伝えてくださったので、3階席に居た私にもはっきりと聞き取れました。サラサーテというと私は「ツィゴイネルワイゼン」しか知らないのですが、ヴァイオリンの名手だっただけに相当難曲なのでしょうね。しかし、聴き手にとっては、この曲は実に面白く惹きつけられました。ブラボー!最後はエイミー・ビーチの「ロマンス」。恋する女性を演じているような熱い情熱を感じました。五嶋みどりさんの、高音で奏でられる静かな静かな音が鳥肌が立つほどに綺麗だなと感動しました。マクドナルドさんのダイナミックなピアノも大変魅力的な演奏会でした。
2002/ 5/17 Fri.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ピアノ&指揮:マレイ・ペライヤ
ペライヤが指揮もするというのは最近まで知りませんでした。 ピアニストで指揮者って意外と多いですね。 バーンスタイン、エッシェンバッハ、アシュケナージ、バレンボイムなどなど。どちらかひとつでも大変なのに...。 これもピアノという楽器の特徴なのかもしれませんね。 ピアノは1台でオーケストラを表現できるだけの能力を持った楽器ですし、ピアノを弾く時に ”このフレーズはこういう楽器” といように、他の楽器をイメージして弾く事もしばしばあります。
ピアノコンチェルトの演奏で、「弾き振り(演奏しながら指揮をするスタイル)」するというのは、オーケストラという巨大な装飾の付いたピアノを演奏するというようなものなのかもしれませんね。 今回の演奏会では、ピアノの蓋をはずし、客席に背を向けた形でピアノを縦に置き、ちょうどピアノの周りをオーケストラがぐるっと囲むという面白いスタイルでしたが、まさにペライヤが巨大な楽器を演奏しているという印象を受けました。 そして、ラッキーなことに私は、ペライヤの弾き振りを前から見える位置、つまりオーケストラ側の席でしたので、演奏のすべてを堪能することができました。
解説によれば、ペライヤは、'91年から数年間、指を故障してピアニスト生命の危機に直面し演奏活動を中止していたのだそうです。 その時期、なんとかしてピアノが弾きたいという執念からバッハをひたすら研究して奇跡の復活をしたのだそうですが、世界から絶賛されている深みのある演奏にはそういう経歴が隠されていたのですね。
今回はその音楽に直に触れることができた感動の一夜となりましたが、モーツァルトとバッハのピアノコンチェルトを弾き振りし、交響曲「ジュピター」では指揮者として登場するというプログラムでした。 モーツァルトのピアノコンチェルト第20番。きびきびとした、めりはりのある音楽でした。 セント・マーチンオーケストラとの息もぴったり! まさに全体が一つの楽器として美しく調和のある音がホールに満ちていました。 モーツァルトの作品はペライヤのライフワークのひとつなのだそうで、必ずプログラムに登場するのだとか。有名な第2楽章では、愛情たっぷりの表現に身も心もとろけてしまいそうでした。 バッハのピアノコンチェルトは初めて聴きました。 パンフレットには次の様に書かれていました。
「バッハの作品に光を見いだしたペライヤは、その後もずっとバッハの楽譜の裏側を読むべく、スコアの研究を続けている。 いかにしたら作曲家の魂に近づくことができるかを日々模索している...........」
ピアノを弾けなかった苦しい時期にバッハのスコアに哲学を見たのでしょうか、私だったら苦しくてピアノから離れてしまうと思います。 そんな気持ちで聴いたバッハのピアノコンチェルトは、一音、一音に生命力がみなぎり、いつも聴く会場で、こんなにピアノの音が力強く感じたことがないほど。 アンコールは、バッハの「G線上のアリア」でしたが、よく心が洗われるようだという表現が使われますが、正にこれがそうだと体感できるような美しい音空間でした。
2002/ 4/14 Sun.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ピアノ:及川浩治
全国で大変な人気となった1999年の「ショパンの旅」、昨年の「情熱のベートーヴェン」、そして今年の「ショパンの詩情とリストの超絶」と、3年連続で及川浩治さんのコンサートを聴く機会に恵まれました。
1810年ポーランドに生まれ、39年の短い生涯をピアノと共に生きた天才、ショパン。
1811年ハンガリーに生まれ、天才ピアニストとして圧倒的な人気を保ちながら作曲にもその技量を生かして意欲的な活動をした、リスト。
この二人の天才は、お互いに刺激しあって、今日のピアニズムを完成させたといっても過言ではないと思います。ですから、ピアニストにとってショパンとリストは重要なレパートリーであることは言うまでもありませんが、こうして並べて取り上げて演奏されるというプログラムを聴いたのは初めてのことかも知れません。
実際に聴き比べてみると、その個性はあきらかに対極的な印象があります。 プログラムは、ショパンの第1番のワルツから始まりましたが、及川浩治さんの演奏は華やかに輝いていて、まさに「華麗なる大円舞曲」でした。
特に強調して歌いたいところは、1音1音テヌートして訴えかけてきているような演奏でした。
リストの「スペイン狂詩曲」は、リストのスーパーヴィルトーゾぶりが遺憾なく発揮された曲ですが、熱狂的に演奏をするリストがステージで演奏する及川さんとダブって見えるほどの迫力ある演奏で、弾き終えると共に立ち上がり拍手喝采!
休憩を挟み、後半の最初は、リストにもこんな曲があったのかしらと思う「コンソレーション第3番」。
この曲も、えっと思うような長い長い間があったりして、聴き手にメッセージを送っているように感じて聴いていました。
「メフィストワルツ第1番」は本当に悪魔的・官能的な音楽ですよね。 圧倒され魂を支配されそうになりました。
ショパンの「マズルカ第41番」は短い曲ですが、ショパンらしい美しく哀しい旋律が魅力的なのはもちろん、コーダに出てくるカノンの響きの幻想的な美しさにはとても魅了されます。
最後の曲「幻想ポロネーズ」へのスムーズなつながりで、地味めのショパン好きには堪らないプログラムでした。
「幻想ポロネーズ」は、いつかじっくりと取り込んで勉強したいと思っている曲です。
ショパンの内面にある苦悩が冒頭の和音に現れているようで、奥深く哲学的な音楽だと思います。
今回は聴き応えのあるプログラム内容でしたので、アンコールはショパンの「ノクターン第2番」だけでしたが、それで十分お腹一杯、満足でした。
2002/4/ 6 Sat.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス
テノール:ルーフス・ミュラー
「心が洗われるから」と知人から頂いたCDはモーツァルトのヴァイオリンソナタでした。ヴァイオリンがデュメイ、ピリスのピアノでした。確かに、深く切ないヴァイオリンの響きに軽やかなピリスのピアノがマッチしていて、ソファに深く座ってコーヒーを飲みながら穏やかな時が過ぎていきました。ショパンのノクターン全集では、大胆で輪郭のはっきりとした演奏に、はっとさせられました。甘美な曲想が強調されがちなノクターンですが、ピリスのショパンにはそれとは趣の異なる、独特の音世界があるよう思いました。その音世界に初めて直接触れることが出来たコンサートでした。プログラムはシューベルトとベートーヴェン。ピアノソロとテノールの歌曲が織り混ざった、全体がひとつのドラマとして構成されたものでした。ですから、曲間での拍手は無し、演奏も通してというスタイルで行われました。ピリスはシューベルトへの思い入れが人一倍強くて、歌曲そのものにアプローチしたいという気持ちから歌手を捜したのだそうです。そして、何人もの歌手を聴いて、それこそ神様に「歌手をください!」とお願いして、やっと巡り会ったのがミュラーでした。神様から贈られた理想のパートナーとのステージは息もぴったり。ステージだということを、いえリサイタルだということさえも感じなくなったような気がして、ただただ聴き入ってしまいました。冒頭はベートーヴェンの「アデライーデ」という歌曲。さりげなくピアノを弾き始めるピリス。そして澄んだ歌声が流れて心地の良いドラマが始まりました。歌い終わるとミュラーさんが優しく譜面代を畳んでピリスのピアノ独奏にバトンタッチしていきます。一部のプログラムの最後に演奏されたシューベルトのソナタ イ長調 Op.120 は、私がシューベルトを勉強する突破口になるだろう作品で、何回かは弾いていますが、流れるような美しい旋律がいかにもリートのシューベルトといった感じ。この最初の入りが、言葉にできないくらい慈愛に満ちた音で、天にも昇りそうな気持ちにさせられました。ピアノの音が次第にコーラスをしているように感じました。特にチャーミングなソプラノは女性ではなくボーイソプラノの歌声でした。ピリスのこの曲を演奏するのが楽しくて仕方がないという様子がペダルの踏み方に現れていました。第2楽章のアンダンテは、本当にゆっくりと1音1音大切に奏でられ、安堵と隣り合わせの不気味なシューベルト独特の音世界をさまよっているような感じです。びっくりするほど小柄なピリスなのですが、後半のプログラムのベートーヴェンピアノソナタ「月光」では、どこからこんな音が出てくるのかしらと思うほどの迫力と幻想に包まれました。弱音の美しさが一層迫力を強調しているようです。 音、ひとつひとつに感謝して弾いている、そんな演奏を聴いて私がベートーヴェンを弾くときに感じるスタンスとは全然違うそれに、目から鱗の思いでした。 私は、ギリギリのところで演奏してしまいたくなる緊張感がベートーヴェンに対するスタンスと勘違いして、「腕の1本や2本」という具合に興奮して弾き終えますが、無心に弾き終えるピリスの演奏。 ひたすらに「無心」。 ショックでした・・・。最後にベートーヴェンの「創作主題による32の変奏曲 ハ短調」は、ハ短調という調性の持つドラマティックな響きもあって、とっても激しく熱い演奏でした。この曲、あるいは「悲愴」ソナタを思って、シューベルトは亡くなる直前にハ短調のソナタを書いていますが、ベートーヴェンに焦がれて焦がれて、しかし独自の音世界を築いたのですね。今夜、ベートーヴェンとシューベルトを聴いて、そろそろ私もシューベルトの世界に足を踏み入れたいと思いました。
2002/2/ 22 Sun.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
カウンターテナー:スラヴァ
世間では、1995年にアルバム「アヴェ・マリア」が25万枚を越える大ヒットとなり話題となっていたそうですが、私はといえば、昨年のHPでクリスマス特集の中の1曲に選んだカッチーニの「アヴェ・マリア」がスラヴァと巡り会うきっかけとなったのでした。そして、ちょうどその頃、このコンサートのこともわかり慌ててチケットを手に入れました。
アヴェ・マリアばかりだと思っていたのですが、会場で渡されたプログラムには他にアルビノーニの「アダージョ」、グリーグの「ソルヴェイグの歌」なども入っていて、ワクワクして始まるのを待っていました。それにしても、色々な作曲家が「アヴェ・マリア」を書いているのには驚きます。私が知っている曲は、バッハ/グノー、カッチーニ、シューベルトの3曲ですが、その他に有名な作曲家では、サン=サーンス、ストラヴィンスキー、それから面白いのはスラヴァ自身の作曲や、映画音楽のモリコーネ、加古 隆さん
などなど。 プログラムの最初はアルカデルトのアヴェ・マリア、初めて聴く曲ですが、生で聴くスラヴァの柔らかい声に早くも子守歌状態となってしまいました。「声のダイヤモンド」と呼ばれているそうですが、納得。
伴奏の弦楽も重厚な味を出して、アルビノーニの『アダージョ』は深い哀しみを感じました。そして、カッチーニの「アヴェ・マリア」。一番聴きたかった曲が前半の最後。こちらも胸が熱くなる歌声でした。後半のプログラムに入っていたグリーグの『ソルヴェイグの歌』、一番感動した曲です。もともと歌曲ですが、歌というのは本当にダイレクトに伝わってくるものだなと思いました。曲のおしまいの方で鳥がさえずるような音が聞こえてきました。なんの音だろうと思ったら、なんと、スラヴァの口笛だったのです。すごく綺麗、そして声と一緒で高い!思わず隣りの母と顔を見合わせてしまいました。シンセサイザーで色々な音を使っていたのも面白かったです。雨が降る中、教会の鐘の音が哀しく少し不気味な感じで鳴っていた場面もありました。後半10曲に続き、アンコールは、5曲も歌って下さって、会場も盛り上がりました。アンコールではガラリと雰囲気が変わり、Jazzナンバー『マイファニーバレンタイン』や『イン
ア センチメンタルムード』など、妖しい魅力に酔ってしまいました。それに、ステージに現れるスラヴァのお茶目なパフォーマンスにも笑いが。サービス満点なコンサートに母も大満足していました。
2002/1/ 28 Mon.
場所:札幌コンサートホール Kitara 大ホール
ヴァイオリン:高嶋ちさ子
ピアノ:加羽沢美濃
このコンサートは昨年12月20日に行われる予定だったのですが、ヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんの急病でキャンセルとなり本日の公演となりました。TVなどでもお馴染みの高嶋ちさ子さん。多忙が原因で首を痛めたのだそうです。コンポーザー・ピアニストの加羽沢美濃さんのアレンジされた曲は、私のHPで度々登場していますが、彼女の才能には、いつも脱帽しています。そんなお二人によるコンサートは、もう4年になるのだそうで、息もぴったり。素晴らしいコンビネーションで楽しいコンサートでした。
1曲目は、バッハの「G線上のアリア」。 ヴァイオリンとピアノで聴くのは初めてですが、伴奏とは思えない?加羽沢さんのピアノと滑らかな美しい音の高嶋さんのヴァイオリンのアンサンブルに聴き入ってしまいました。なんと、演奏の都度、加羽沢さんの伴奏は変わるのだそうで、同じ曲でも、常に新鮮みがあるのだと高嶋さん。 このまま進行するのかと思いきや、いきなりお二人でマイクを持ってMCになりました。その話がまた面白くて、某吉○興業から引き合いがありそうです。
加羽沢さんのボケに、高嶋さんの突っ込みと、まさにこちらの方も名コンビです。
演奏の途中途中にMCがありましたが、高嶋さんの解説によるヴァイオリン講座では、ヴァイオリンに関する色々なお話を聞き、とっても面白かったです。
年齢に合わせたサイズがあるというのも初めて知りました。現在、使っているヴァイオリンは1700年代の楽器なのですって。そして、そのお値段は、何千万クラス、なんと弓だけで300万円もするのだとか。 私は、中学の時、音楽鑑賞でヴァイオリンの名曲、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」を聴きましたが、その時に音楽の先生から、ストラディヴァリウスという名器を手に入れるために辻
久子さんというヴァイオリニストが家を売って、その名器を手にしたという話を思い出したりしていました。そのストラディヴァリに匹敵する楽器なのだそうですが、加羽沢さん曰く、”あぁ、もどきなんですね....”(^^;
どうりで深い味わいの音色がするわけです。 対する加羽沢さんのリクエストコーナーでは、会場のお客さんからリクエストをとって演奏されたのですが、これには、びっくり仰天。 「雪の降る街を」「川の流れのように」それから、リクエストの段階から可笑しかった「すうだら節」などバラエティな7曲が、メドレーとなって立派な曲に仕立て上げられました。
それが、どの曲もあぁと頷いてしまう程はっきり特徴を捉えていて、曲から曲へと移りゆくのも見事でした。加羽沢さんはメモをとって(多分、曲目を書いていたと思うのですが)すぐ即興で演奏しちゃったんですよー!クラシック人間の私にはショックな出来事でした。そうそう、加羽沢さんはクラシックは少々苦手なのだそうで、アルビノーニの「アダージョ」はリクエストでパスされました。なにしろ即興で弾きながらアレンジしていくので、知らない曲は弾けないというわけです。ちなみに尊敬する音楽家は誰と高嶋さんに聞かれた時、「チャゲ&飛鳥」と答えたそうな。それで作曲への道に進むことになったというのですから凄い....。 プログラムの締めくくりは、ヴァイオリンの名曲、マスネの「タイスの瞑想曲」とサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。 講座で奏法のお話も聞いた後でしたので素晴らしい演奏と名器の奏でる音とピアノの語りをたっぷり聴かせて頂きました。
この素晴らしい演奏があるからこそ、ここまでくだけたコンサートが出来るのですね。 題名どおりのカジュアルなクラッシックコンサート。
これからも楽しみです。
2002/1/ 27 Sun.
場所:北海道厚生年金会館
演奏:ロイヤルメトロポリタン管弦楽団
指揮:音楽監督:堤 俊作
振付:谷 桃子 / 芸術監督:久光孝生 / プロデュース:新村訓平
ゲストダンサー:リーガン ゾウ / ホワン カイ / 道内外バレエダンサー
バレエを鑑賞したのは2回目ですが、オーケストラが演奏してというのは初めてで、ステージの下で客席から見えない位置にオーケストラの皆さんがいらっしゃるんですよね。 それだけでも、なんだかワクワクしていました。 しかも、「くるみ割り人形」を全幕です。指揮は、以前もコンサートノートでご紹介した堤 俊作氏。堤氏は、 日本のバレエ音楽の第一人者として世界的にも有名ですが、なんといっても、余市町でイベントがあった時に共演して頂いただけに親近感が湧きます。 序曲が軽やかに流れだすと幕が開き、スクリーンには札幌の街の雪景色が...。その演出が見事で、引き込まれていきます。 そして、華やかな舞台、彩り鮮やかな衣装のダンサーが登場して楽しいクリスマスファンタジーが始まったのです。前半は子供が多く出演しましたが、とっても可愛らしくて楽しい気分になりました。ねずみ軍に扮したちびっ子が最高で、おもちゃの兵隊に大砲で打たれて担架で運ばれるシーンとか、思わず笑ってしまう演出も。 後半はクララが夢の世界で、王子様とお菓子の国へ旅立つストーリーですが、そこからはお楽しみの曲の数々。色々な国の踊りが披露されます。 衣装を見ただけで、あっ、スペイン!チョコレート!と、音楽と踊りを同時に鑑賞でき、寝物語に童話を聞かされているような気持ちになりました。 なかでもアラビアのダンサーの踊りは、艶めかしく、いかにもという感じが伝わってきて、魅了されました。 お菓子の国の女王様も、うっとりとするような金平糖の踊りを披露してくれました。音楽と踊りがひとつに溶け合って、すばらしい演出の素敵な時間でした。 札幌は雪が少なく、雪祭りの準備も大変そうでしたが、スクリーンに映った美しい雪景色で、思わぬところで札幌の冬を堪能できた気分です。そして、バレリーナのような軽やかな足取りで会場を後にしました。